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【3,079】2016.12.07

電話。

滅多に使わないが、どうしても直接話す必要のある相手だったので、昨晩珍しく、使う。

深夜近くに電話をかけること自体が、ヘタしたら1年以上ぶりかもしれない。最初は、要点をまとめて20分ぐらいで伝えるべき事を、と思っていたが、話しが予想以上に長引いてしまい、明け方の4時頃まで話し込んでしまう。

話し相手にも気分を盛り上げてもらうよう、私自身は常に笑いを絶やさないようにしているが、声を張り上げるべき時は勿論、張り上げる。相手の話しを集中して聞く事を生業としている部分もあるので、とりわけ逆に、相手が自分の話しを聞いていない上に蔑ろにされていると感じた瞬間に、文字通り「捩じ伏せる」。

もっとも、怒りという表現は多彩な感情の中でも特にエネルギーを消耗するので、日常的に怒るなんてのは、お釣りがちゃんと返ってこなかった、運転中に強引な割り込みをされた、変なホームレスに寄られた、程度の瞬間で、そういう場合は自然に「Shiz!」「Sonofa!」「Fcuk!」が口を突いて出るし、それらは投げて終わりの呪詛みたいなもので、むしろストレス解消に近い。

故に、疲労を覚悟で、一対一の通話相手に対して声を大きくする事には当然、上記以上の理由がある。端的に詰めてしまうなら、不明瞭な点を明確にする、僭越だが相手に修正を促したい、そしてそれ以上に、良好な関係性を壊したくない。

私は自分の事をまだまだ未熟だと痛感しているし、相手が年下であっても、叱るのは性格的に全く、向いていない。むしろ妻に毎日、細かい事で叱られる側だ。可能な限り、幾ら相手を正したい(と偉そうに書いてしまうが)思いがあっても、インサイドヘッドに出てくる真っ赤なヤツの出番は私の頭の中では控えてほしいし、正直、避けたい表現なのだ。

ほんの数カ月前に、ちょっとした誤解による、似たような流れで口論になり、1年ぐらいかけて築いた信頼関係がほんの5分で粉々に崩れる、という一幕を経験したのもあるが、まあそいつは最初から謙虚さに著しく欠ける雰囲気は何度も感じていたし、その周りに居た人間から話しを後に聞いたら、アナタの真っすぐな性格上やっぱりそうなったよね、無理もないでしょあいつはそういうヤツだから、と聞かされて「なんだ、みんなも同じように思ってたのか」と多少は気分が晴れたものだが、それでも「何であの相手を叱ってしまったんだろう」との自己嫌悪に何日も襲われた。

その時の相手は途中から通話を拒否し、文章でぐだぐだぐだぐだ文句を送ってきたものだから、そもそも文章では話し合いなんて絶対出来ない事から(テキストだけで問題解決しようとする人間は、私は大嫌いだ)、完全に無視及び断絶となった。私と一対一のやり取りにも関わらず、そいつと関わりある私の知人へも勝手にメールを複写転送していたような輩だったので(これには私の知人も呆れていたが)、いずれどっかの時点では大きく衝突していた感は拭えないところではあるが、それでも自分の心の中には、面識ある第三者に対して厳しい事を言ってしまったという後悔の念が、随分と長く付き纏ったものだった。「何故、連絡をしてしまったの、だろうか。」

幸い、昨晩の相手は謙虚で素直だったから、途中で通話を切ったりはせず、私も自分が正直に思っている事を過不足なく伝えられたと思うし、きちんと理解もして頂けただけでなく、実は私は寂しがり屋だという弱点も指摘された。確かに自分でも、それは思う。基本強がってはいるが、1人では生きられないのを、身に染みているからだ。だから話しが広がってはなかなか終わらず、明け方まで続いてしまったのだが。

私はどっちかというと自分の時間を優先するタイプなので、これだけ気にかけた第三者も珍しいというか、やたら親身になっている自分自身の行動が、信じられなかったりもする。でもそれだけそのひとと一緒にこれから長くにかけて、しょっちゅう笑って、笑って、笑って、楽しんで、ときどき何ださっきのassholeは!とふざけた連中に中指を突き付けて、たまにしんみりした気分になって、という思いが根っこにあるから、なのは間違いない。一緒に行動していて単純に、滅法、面白いのだ。

多人数とのベタベタした付き合いは昔から苦手だが、自分と似たような考えや意志を持った少数の相手と、共有可能な部分は共有して、どこの国に住んでいようと何かと落ち着かない今の時代をちょっとでも風通し良く、前向きに歩んでいければ、だ。あとその相手には、とりあえず長生きするように、私より先に死ぬんじゃあ、ない、ってのもしっかり言っておいた(笑)。

たまたま何日か前、今年の作品の中でも知名度がゼロにも関わらず批評家からの評価がやたら高かった、「Don't Think Twice」を観て、どんな小さな枠組みの中でも、分かりあえる仲間を持つってのはいいものだな~、と感じたのも、地味に大きかったりする。

そのまま3時間ほど仮眠を取って、妻を駅まで送迎後、ひと仕事を片付けようとPC前に向かうが、やはり頭が全然働かないので、無理やり仮眠を取る。

お昼前に何とか目覚めた後、新居の鍵が用意できたとの連絡があったので、不動産屋の担当者が事務所に居る都合を聞いて、夕方に鍵をピックアップしに行く。これで新居へいつでも入れるが、現在置かれているカーペットを業者に頼んで全撤去や、プロパンガスの配線修正、便器の水漏れ修理も案内されたので、それらが全部終わるのが多分、一週間後。なので本格的な移動は、19日以降になりそうだ。

今の借家も考えたら、6年ほど住んでいたので、ここを去るのは意外と感慨深いものがあり、部屋は狭いが駅から近く、美味しいレストランも車で10分内の距離にあったし、何より安全極まりないエリアだったので、6年ほど住んでいて、自宅の玄関から$30した新品のシューズを一晩で盗まれた事と、手前の家に引っ越してきた住人で頭のおかしい奴が2人ほどいた(退去もそいつらは早かった)ぐらいしか、厭な思い出が無い。我ながらよく当時、こんな場所を見つけたものだ。

昼食を取ってからは頭もだいぶハッキリしてきたので、不動産屋の担当が事務所に戻るまでの間に、溜まった仕事の一掃。曇り空が目立った昨日と違って、今日は素晴らしい快晴だ。

夕方に、新居の鍵を回収に行く。なんかこれ、やけに軽いぞ。

夜には、妻を駅から家まで送迎。車だと片道3分だが、その3分の間で聞かされる仕事の愚痴の密度がもう、スゴいのナンの。正直、なんで妻が仕事先に怒っているのかは分からないが、矢のような喋りの聞き手に回れる私の特性はここでも活きてくる。言っている意味が分からなくても、「Aha!」「I see!」「I agree!」を適当に発しておくだけの、簡単な仕事である。

気付けばもう、夜のいい時間。とりあえず今日の事は文章化しておいたほうが良いと思ったのでこうして書き始めたが、それのBGMがてら、昨晩のレイトショーを流していたら、現副大統領のジョー・バイデンが番組の半分以上に出演して2020年に大統領に立候補する可能性がある事や、癌治療を促進させる団体「Cancer Moonshot」を向こう10年かけて強固なものにする事などを、いつもの力強い口調で語っていた。

特に2020年の大統領立候補に対する彼の以下の発言は、非常に「らしい」ものだったので、引用しておく。

It sounds corny, but there are two things: everyone deserves to be treated with dignity, and the second fundamental principle is the abuse of power should not be tolerated at all under any circumstances.(安っぽく聞こえるかもしれないが、重要な点が2つある:全ての人間は例外なく尊厳を持って扱われるべきであり、それに続く根本的な原則は、如何なる状況下に於いても、権力の濫用を寛大に扱ってはならない事だ)」