幻の「天顕祭」

レイアウトラフ

過去同人誌のデータ探しをしていて見つけた1998年の画像。1998年は未完成作がありすぎる。「天顕祭」ができたきっかけを説明する機会があると、実家の近くの神社でお神楽を見てインスパイアされ、描き始めるまで10年…とおおまかに説明しているが、その10年間には色んなあがきがあったのを思い出す。

イラストにペン入れし、Painterで試しに着彩し、同人誌の表紙にするつもりでいたようだ。記憶ははっきりしないがネームも一応できていたと思う。原型となった、Belneさんにコミックワークショップで見て頂いた16ページのネームのあとに作り直したものだったはず。相方の秋元に見てもらい「わけがわからない」という評をもらった記憶もある。そのネームは残っていないし探す気になれないが雰囲気漫画だった気がする。真中にあたる男が登場していたが鳶じゃなく(確かテキ屋)、特に強い意志も無かった。咲が着ているのは普通の?防護服で、祭礼用に様式化されていない。まだ世界観が中途半端だったことがわかる。結局ろくに描き始めることさえできず、ペーパーやサークルカットは描いているのに予告だけで終わった。

真中が真中の名を持ち、鳶として義理と人情のある存在となったおかげで「天顕祭」は2005年に息を吹き返し再起動できたが、それまでは描くべきだという心の声だけがはっきりしている状態で苦しかった。完成作にもまだわかりにくいところや「ああすればよかった、こうすればよかった」という思いはあるが、この画像を見るとあのころの挫折感がよみがえり、最後まで描き切れたことが奇跡のように思えてくる。


同人誌の表紙はもっとさりげない感じだったしコミックスもそうするつもりだったがデザイナーの方の要望が正面顔だった。はからずも没同人誌ではそうだったんだな…。でも同じなのは構図だけで主人公たちの意思の有無が表紙にも出る。


画像2

同人版表紙(総集編にも使用)

(了)

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