🎀作品紹介🎀 #65 自らの美に殉じる人たちへ
20世紀の女性をファッションによって解放した代表的なデザイナーかつファッションアイコンと言えば、ココ・シャネルとマリー・クワント。
この二人の魅力は、自由に自分らしくふるまうことにこそ価値があるとし、多くの女性の生き方や考え方を自分を起点に変えてしまったことだと思います。
男性中心の当時のファッション業界で、自分の感覚や願望に忠実に生きることで、多くの女性たちから共感を得、彼女たちが生きやすい世界を切り開いた思想家であり、闘争家であったのだと思います。
「ウーマンリブを待っている暇はなかった」との言葉がそのことを物語っています。
シンプル&エレガントをコンセプトに着やすや心地よさこそ贅沢だとし、流行ではなく不変にして普遍なスタイルを確立したシャネル。
世界一有名な香水、シャネルNO5のシンプルなネーミングとボトルデザインはその象徴的アイテムです。
喪服のイメージとしてタブーだった黒色の概念を覆し、モード色として取り入れたリトルブラックドレス(LBD)は不変のスタイルとなっています。黒のキャンバス
イミテーションジュエリーでそれまでは富裕層たちの特権であったおしゃれを中流階級でも楽しめるモノとしました。
固定概念だった下品さに新たな価値を置き、膝を丸出しにしたミニスカートを大流行させたミニの女王、マリー▪クワント。
既存のルールに囚われず、自分らしく生きることをモットーに洋服、アクセサリー、靴、バッグ、メイク、これらすべてをファッションとし、自己表現と位置付けました。
また、既存のジェンダーや人種、階級意識を打破すべく、中性的なモデルや黒人モデルを採用したり、パンツルックやジーンズをラインナップに加えました。
大英帝国勲章受勲の時には、メディアの批判をもろともせず、自らデザインしたジャージー素材の服で式典に臨みました。
そんな二人は、「女性を解放した女性デザイナー」と世間から評価されつつも、「女性の解放や権利」などは一言も言わず、まず自らを解放し、自分らしさが発揮できるビジネス環境を作り、そこに人生を捧げ、ファッションを通じてその時代の人々の感性や美意識を変えてしまったのです。
それは、時代のうねりの中、アジテーションもデモも暴動もない、ファッションによる鮮やかな意識改革でした。
3/8は国際女性デーです。
誤解を恐れずに言えば、私は「女性」と名のつくモノにはあまり共感できないタイプで、あえてつけなくても、と思ってしまうのです。
女性の権利や解放を謳わずに、女性の意識改革を成し遂げた彼女らの爽快な生き様により魅力を感じるのです。
ただ矛盾するように聞こえるかもしれませんが、女性の地位や権利の獲得のために闘ってきた数々の女性たちの苦闘の歴史を心に刻むことはとても意義深いことだと思っています。
フランス革命は、「自由、平等、博愛」の理念の下、市民が権利の獲得に勝利したとのイメージがありますが、その恩恵にあずかったのは一部の白人男性のみで、女性や奴隷、有色人種は蚊帳の外でした。
そんな中、女性の権利を訴え続けた女性政治家オランプ・ド・グージュが提案した「女権宣言」の第10条にはこうあります。
「女性は断頭台にのぼる権利を持つ以上、(中略)同様に 演壇にのぼる権利をも有するものである」と。
結局彼女は、人民主権を阻害したとしてギロチンで処刑されました。
こうした権利を求めて闘った女性たちの歴史は決しては忘れてはいけないと思います。彼女たちの切り開いた道の先に私達がいるのですから。
この作品を描きながら、自分が信じる美に殉じる姿こそ、私が尊敬してやまない生き方なのだと改めて思いました。