🎀作品紹介🎀 善魔とオニオンスープ
ヨーロッパの有名なことわざに「地獄への道は善意で舗装されている」があります。
善意からの行動が人を傷つけたり、不幸にしたり、状況を悪い方向に導くこともあるという意味です。
良かれと思って行ったことが悲劇的な結果を招いてしまうのは悲しい皮肉です。
善意が厄介なのは、表面上は悪意に見えないため、善意を持つ人自身、自分が間違いを犯しているという認識がないため、問題が表面化しにくく、放置され、深刻化する危険があるという点です。
具体例をあげますと、国際支援活動として、いらなくなった古着を発展途上国へ寄付するチャリティー活動がよく行なわれていますが、その善意が現地の産業を破壊してきた事実を、寄付した人でさえ、ほとんど知りません。
先進国から発展途上国に届いた古着の販売価格は1着たったの6円。
これでは、現地の産業がほぼ壊滅状態になるのは容易に想像がつきます。
私が行った寄付は本当に役立っているのか?その終着点を知らない人、気にしない人が多いのが現状です。
私自身の体験を振り返っても、感情に突き動かされて行った善意は、相手にどういう影響を与えるか、ましてや迷惑を与えうるなどとは考えないことが多いのではと思います。
ひょっとするとこちらの善意が相手には重荷になっているかもしれないのに、そこまで思いが至らず、善意の感情におぼれ、自己満足に陥ってしまうのだと思います。
そういう人を悪魔に対して善魔と呼ばれているようです。
少女の涙は、純粋に苦しんでいる人への同情の涙です。
苦しんでいる人たちを何とか助けたい、力になりたいという気持ちも嘘ではないでしょう。
しかし、自分の思想や行動は決して間違っていないと信じることで、その善意の涙もそれを受ける側にとっては偽りの涙に見えてしまう恐れがあることも決して忘れてはいけないと思っています。
悪魔よりも厄介な善魔は、私も含め、誰の心にも潜んでいるのではないか、そんな思いを込めた作品です。
※英語のdescriptionはにあるcrocodile tearsは「偽りの涙」の意味です。
クロコダイルは「獲物を食べるときに泣く」といった中世の逸話が出所。
実際にはクロコダイルは涙を流しても「泣く」ことはないことから、見せかけの涙とも解釈されています。