サンタクロースの光と闇
サンタクロースの原型にはいろいろな説があります。
聖ニコラウスというトルコ生まれの神父がよく知られていますが、北欧神話の最高神オーディン説もその一つです。
オーディンは、背が高く、長い髭を生やした老人として描かれ、世間で知られているサンタクロースの風貌にそっくりです。
オーディンの愛馬は8本足の空飛ぶ神馬スレイプニルで、そりを引くトナカイのモデルとされています。
現在では、赤い鼻のルドルフを先頭に9頭のトナカイがそりを引く姿がスタンダードです。
そして、戦争と死の神として恐れられていたオーディンが、戦死者の魂を集めるイベント「ワールドハント」を行っていたのがクリスマスの時期でした。
オーディンの持つ二面性が二人のサンタクロース(赤サンタと黒サンタ)を生み出したと考えられています。
「ワイルドハント」の途中で、愛馬に干し草をくれた子供たちには、キャンディやお菓子をプレゼントする優しい一面が、良い子にプレゼントを配る善い赤サンタに。
戦死者の魂を集まるため、わざと戦争を起こしたり、戦士を殺したりもした恐ろしい一面が、悪い子をさらっていく怖い黒サンタに。
こうして光と闇を象徴する二人のサンタクロースが誕生したのです。
聖ニコラウスや北欧神話のオーディンなど、いろいろな説が地域の民間伝承を飲み込みつつ、時代を経て、現在のサンタクロースのイメージが作られたのではと思っています。
またこの作品は、サンタクロースを離れて、2つの人間関係を映し出しています。
女主人の髪をとく侍女と娘の髪をとく母親です。
この2つの人間関係を通じて、闇に服従する光と闇を愛おしむ光という形で、1人の人間が抱える光と闇の複雑な関係を表現しました。
世間のクリスマスのイメージに相いれない全くわくわくしないクリスマス作品になりましたが、ダークヒロインの世界観にぴったりの満足のいく作品になりました。