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母国と自国

前回ブログを書いてから、ちょうど20日ほど経ちました。あの日は、出発48時間前にイタリア旅行をキャンセルした日でした。そして、昨日は来月の日本への旅をキャンセルすることに決めました。

昨日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、ホノルル市が今日から4月末までの間、「Stay at Home, Work from Home Order(自宅待機、在宅勤務の行政命令)」を施行することを発表しました。つまり、一般市民の不要不急の外出は禁止。医療機関、銀行、レストラン(お持ち帰りと宅配のみ、店での飲食不可)、食料品店といった生活に不可欠な業種を除く、すべての業種に携わる人は在宅勤務を行うというものです。違反者は$5,000以下の罰金または1年以下の禁固、もしくはその両方が課せられます。

一昨日には、ハワイ州が3月26日から4月末まで、ハワイ州への渡航者全員に自宅やホテルでの14日間の強制隔離を義務付ける方針を発表しました。そして、その半日後には日本政府が、アメリカからの入国者全員に14日間の強制在宅検疫と公共交通機関の不使用を要請しました。

そして先週、アメリカ国務省は全世界を渡航禁止区域に指定し、既に海外に渡航している自国民にも早急の帰国を求めています。

というわけで、もうどう考えても、ハワイを出ることは無理な状況です。海外に住んで30年以上になりますが、母国への入国制限はもちろん、今住んでいる国から脱出することもできないような状況は初めてです。最近テレビのニュースで頻繁に使われる言葉「unprecedented(前例のない、前代未聞の)」がぴったりの状況です。

学生時代には、お金がなくて日本に帰れませんでしたが、テロや戦争ではなく、感染症で日本に帰れない日が来るとは思ってもいませんでした。実家の母とは、スカイプやメールで連絡を取り合っていますが、いざという時にすぐに帰ることのできる状況ではありません。高齢の母の「いざという時」というのは、病気や入院になるのでしょう。もしかしたら葬儀かもしれません。34年前に就職でパリに旅立った日に「親の死に目には会えないかも」と思ったことが、現実になるかもしれない状況です。なので、母にはくれぐれも病気になったり、転んだりしないようにスカイプで言ってあります。

ハワイには、ねこが2匹いるだけですが、今の私の生活の基盤はここにあります。ですので、非常事態だからといって、すぐに実家に帰る訳にはいきません。私にとっては、ここが帰ってくるところです。日本は母国であり祖国ですが、もしかしたらアメリカが自分の国という意味での自国になりつつあるのかもしれません。

(このブログは2020年3月24日にyumiozaki.comに掲載されたブログの転載です)

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