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常連店 〜未完成の珈琲店〜

こんにちは。
yumiです。

今日は、私がいつも大変お世話になっている珈琲屋さん、ノビシロ珈琲のお話。

店主のノビシロ君と出会ったのは、私の大好きなワインバーだった。

そのワインバーの話はこちらから。

私の誕生日。
いつものように1人で店に行ってカウンターで飲んでいた私。
たまたま隣り合わせたお客さんがノビシロ君。

その頃はすっかり店の常連さんだった私は、見たことのない隣の一人客とも話せるようになっていた。

今日が私の誕生日だと告げると、じゃあ一杯ご馳走しますとワインを差し出してくれたノビシロ君。

聞けば彼は、徒歩数分の所に珈琲屋を始めたばかりだと言う。
私はお礼にと、翌週彼の店を訪れた。

想像していたよりずっと小さなその店は、テイクアウトしかできなくて、店内の待つスペースも1人座るのがやっと。
外にベンチがあったけど、3月の夜空にはまだ寒かったのを覚えている。

私より10才ほど年下のノビシロ君は、当時はまだサラリーマンだった。

週に一度の間借りのテイクアウトコーヒー店。

そんなことできるんだ、というのが最初の感想。

その頃の私は、そもそも自分のやりたいことなんてわからなかったし、それ以前の問題なんだけど、自分の好き嫌いも全然わからない状態だった。
それでも、会社員をしながらでも自分のやりたい事や夢に近づいて行こうとするノビシロ君が眩しく見えた。

なんでもゼロかヒャク、黒か白か、やるかやらないか、みたいに考える私は、会社員をしながら、週一でコーヒー屋をやるという発想がなかったから、ただただ、すごいな~って思った。

しかもこの場所でやることになったのも、知り合いだったオーナーのKさんが、使っていいよ~と言ってくれたからだという。

そんなことあるんだ~すごいな~と思いながら、いつか私も、何かやりたいことがあって、そしたらちょうどよく誰かが現れて、ここ使っていいよ~なんて、整って行ったらいいな~と呑気に思った事は覚えている。

案外、人の成功事例を、すんなり素直に取り入れられるのが、私なのだ。
そして、数年後には、ノビシロ君の店の和室を借りることになるんだから、人生は不思議。

翌月の4月には、街は緊急事態宣言なるものが発令されて、飲食店は休業を余儀なくされた。

ノビシロ珈琲は、テイクアウトの珈琲屋。

行き場を失った人たちが、ノビシロ君の珈琲店に集うようになる。

店内は人が集まれるほどのスペースはない、テイクアウトの珈琲店。

一杯一杯、丁寧に淹れてくれるため、提供までに時間もかかる。
だから、お客さんの私たちは、外で、道端で、待つようになる。
そして、そのまま、テイクアウトなのに、持ち帰らずに、そこで、道端で、珈琲を飲む。

季節は春になり、外が気持ちいい気候。

ノビシロ君は、珈琲を気分で出してくれた。
今日の気分は?
ほっとしたい?
すっきりしたい?
フルーツっぽい?
チョコっぽい?
珈琲と思えない例えもたくさん。
いくつか選択肢をくれて、選ばせてくれる。

選ぶのが苦手な私でも直感で選びやすい選択肢。
美味しいか、まぁまぁ美味しいか、すっごく美味しいか。
感想も、難しい事は言わない。

でもこれが、
自分の気分と向き合う練習になったなぁと、今となれば、思う。

頭の回転が早く、知識が豊富で語彙力もあるノビシロ君は味や香りの例え方も独特。

変わった珈琲豆を用意する事も多く、私はノビシロ君から珈琲やお酒の色々な知識を吸収した。

そこで知り合った女性とも友達になった。
なかなか友達を作りにくい私には珍しい。

ノビシロ珈琲は、みんなノビシロ君に会いにきているんだなーと心から思う店だった。

店主が、店を作る。

メニューもなければ、話も長い。
ただ、ノビシロ君が、自分の好きなものを語る。
私は、私たちは、それが好きでこの店に通う。

人とのつながりを、つくる、店。

カフェインを夜に摂取すると、眠れなくなる私は、カフェインの少ない珈琲をリクエストした。

ノビシロ君は、私のために、デカフェを色々用意してくれた。

そして、ノビシロ君は、yumiさんのおかげでデカフェも色々勉強になって、ほんと助かったんだよなーと、こともなげに言った。

私だけでない。
お客さんの趣味嗜好に合わせて、勉強熱心なノビシロ君は色んなことを研究していった。

駆け出しの珈琲屋。
私たちお客さんみんなで作る店。

未完成だからこそ、放って置けないノビシロ君だからこそ、人が集まる。

心理学では
長所で人を愛して、短所で人に愛される
と言う。

まさに、ノビシロ君を見ていると、本当にそう思う。

その後、ノビシロ君は、会社員を辞めた。
この小さなテイクアウトの店を卒業し、少し離れた街の珈琲のある飲食店に勤め始めた。

その後、また別の店舗に勤めたり、別の店舗で、間借りで珈琲店をやったりしていた。

そういえば、私のカードでノビシロ君の勤めていた店が無くなる予言?をしたこともあった。
普段未来予測には使わない私のカード。
たしか、その時は、「10月くらいになにか大事なものを失う暗示があるよ」と伝えた気がする。

当時ノビシロ君が勤めていた飲食店が閉店になった時、真っ先に私のカードを思い出したそう。
こんなこともあるから、カードは本当に面白い。

今の店舗に至るまで、私はいつも、ノビシロ珈琲に通った。

そこが、私の居場所だったんだなぁと、今となれば思う。

気づきたくないのか、気づかないフリをする癖、どうにかならんのかな。
今となれば、って、気づくのほんと、遅いのよ、私。

ずっと、最初から、私の居場所を用意してくれていたのに、ここは、私の店じゃないもん、店は、店主のもの、と、頑なな私、なんなんだろ。

いつか、ノビシロ君は言っていた。

自分にも、居場所を作れるんだと思った、と。
それは、自分の居場所であり、誰かの居場所。

私も、居場所は、たくさんある。
たくさんの常連店や、街や、誰かの中に。

そして、やっぱり、私も、誰かの居場所でありたい。

ノビシロ珈琲では、ノビシロ君が、あなたの居場所をご用意してます。

そして、もっと、より一層、自分と向き合いたくなったら。
私も、あなたのための時間をご用意してお待ちしております。

年末年始に、対面セッション募集してます。
よかったらお問い合わせくださいね。

いつもみなさまのスキ、コメント、ご感想に支えられています。
ここまで読んでくださってありがとう。

それでは、また。

yumi


※許可を得て店名とInstagram載せておりますが、文章や内容については、私の感じたことであり、責任は私にあります。

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