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常連店 〜リビングのようなバー〜

こんばんは。
yumiです。

今日は、とってもとっても大事な、私の第二のリビングの話。

福岡に住んでいる時、家から一番近くにあったバー。
まるでリビングのように、一番通い続けた店。
新潟に転勤だと告げられた日も、このバーで、息ができなくなるくらい、泣き続けた。
途中で怒ったり、笑ったり。

私の感情を、自由に出せる場所。

70代の男性のマスターが、1人でやってる趣味部屋のようなお店。
ビルの2階にあるその店は、分厚い扉で中は見えないし、ものすごおぉく、入りにくい。

当時、私はアプリで知り合った14も年下のイケメンに夢中になっており、その彼とのデート(?)で一緒に行ったのが始まり。
そもそも、行きたかったのは隣の店。
なのに、休みだったのだ。
で、隣から出てきたマスターに促されて、店に。
こんなきっかけでもなければ、とても入れたとは
思えない。
その彼とは二度ほど、この店に一緒に行った。

その後、私はまんまとその年下のイケメンに既読スルー、未読スルーの後に全く音信不通になった。

彼のことを話したくて、私は店に1人で行くようになった。

実に変わった店である。
マスターの推しの歌手のポスターが張り巡らされていたり、マスターが趣味で集めた武器が置いてあったり、マスターの趣味の電子ピアノやギターも置いてある。
レコードもたくさん。
テレビもある。

もともと常連さんしか来ないような店ではあったようだが、コロナの煽りもあって、マスターは知らない人を寄せ付けないようにもなっていった。
常に店にいるのは、3人のオジサン客。
薬剤師と、ライターと、宝石商。

本当に不思議なんだけど、私はなぜか、この店が居心地がよかった。

父と同じくらいの年のマスター。
私はマスターの息子と同い年らしい。
お互いに、親と子を投影しあっていたのかもしれない。

店に行くと、何も言わずにマスターはハイボールとおつまみを出してくれる。
何も言わずに、おかわりもくれる。
お腹が減ったと言えば、うまかっちゃんを作ってくれるし、パスタを茹でてくれる時もあった。

3人の常連ズも、いつもいた。
まさに、仕事が終わったら帰ってくるような、リビング。
飲み終わったら、それぞれの部屋に帰る。
そんな感じ。

毎日のように通う時もあれば、しばらくいかない時もある。
14歳も下のイケメンにうつつを抜かしていた私の話を、マスターは聴いてくれた。

そのうち、私の恋愛遍歴にも話は及んだ。
誰にも話さないと決めていた、話してはいけないと思っていた、言っちゃいけない話、それが、私の過去の恋愛。

DV彼氏から逃げたこと、婚約破棄のようになったこと。私の二大失敗彼氏の事をベロっと話した。

まさか、それを、マスターと常連ズは、面白おかしく聞いてくれた。
なんなら、何度も何度も、飽きずに聞いてくれた。
こんな私のことを、受け入れてくれた。

常連ズの過去の恋愛や、結婚、離婚の話も、何度も同じ話を何度も何度も聞いた。
どんな話も、最終的には笑い飛ばした。
そこで私は、自分の話を、しかも同じ話を何度も何度もしても、ただ受け入れてもらえるという経験をした。

マスターは、頑固で、九州男児の塊。
時々、もう来るなと言われたし、こんな店にいてもなんもならん、他に行くところがあるだろうと、私を店に入れようとしない事もあった。

ほんと、何でなのかわからない。
何を言われても、なぜか平気で、私は店に通い続けた。

常連ズにも言いたいことを言い過ぎて、大喧嘩した事もあったし、マスターと私も、お互い言い過ぎて大声で怒鳴り合って、私が店から飛び出した事もあった。

なんかさ、本当だったら、子供の頃にやるような人としてのコミュニケーションを、ここでやり直した感じ。

言いたい事をずっと我慢して生きていた私はここで、育てなおしてもらったのかもしれない。

この店に行くようになって、一年以上経ってから、初めてみんなと連絡先を交換した。
いつも店で会うから、それまでは連絡先なんて、必要なかった。
そうして、マスター含め、常連ズと別の店で飲んだりもした。

新潟に転勤が決まった時、その頃はすっかり、この店は私のリビング代わりだった。
転勤になったことも、一番最初にここで話した。
家族よりも先に、話した。
その時は、自分がどんな感情なのかもよくわかってなかった。
ただ、日常が変わるのが怖かった。
ここが、この私の安全地帯が、なくなってしまうようで悲しかった。

そんな風に思える場所に、自分の居場所だと感じられるこの場に、いつのまにかずっといたという事実を認めるのも、なんだか怖かった。

この場があったから、私は新潟に来てからも、会社以外に居場所を求めて、店を巡ることができたのだと思う。

怖がりの私が、1人で、知らない土地で、何とか生きているのは、この安全地帯があるからだ。

物理的な距離は、数百メートルから900キロに開いたけど、安心安全で、いつでも私のままで、私らしくいられる場所があると思えたから。

この店を起点に、街全体で、私の居場所がある感じ。

ずっと、ずっと、どこにいてもよそ者で、どこにも馴染めなくて、いつも浮いていて、居場所のなかった私がやっとみつけた場所。

起点は、店なのだろうか?
私自身が、その起点に、なれるのかもしれない。
そしていつか、私も誰かの居場所に、なれたらいいな、と思う。

季節が夏から秋に変わり、冬に向かってる。
寒くなるとやっぱり、寂しい。

仕事が終わったら、何かあったら、何もなくても、一日の終わりに、リビングのようなバーに思いを馳せる。

この冬も、どうか無事過ごせますように。

あの頃のように、毎日行けなくても。
私が、大事に思っていれば、大丈夫。
自分から関係を切らないで繋がり続けていると私が思えば、ずっと繋がっていられる。

ここまで読んでくださってありがとう。


それでは、また。

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