『キッズ・リターン』
山田孝之ドキュメンタリーを観てから、急に安藤くん熱が高まりまして。私が安藤政信を知って好きになった彼のデビュー作品でもある『キッズ・リターン』を久しぶりに観たよ。
もう、誰もが知ってるラストシーンのあの言葉からのエンドロール。あの音楽も完璧なんだよね。本編がそれを見せたいが為の大きな前フリにすら思える。あんなに救いのないラストから、また走り出す未来が明るいものだという希望が見える。
この映画は北野武監督のバイク事故からの復帰作で、意識してやっているわけではないだろうけど死生観が所々感じられる作品になっている。どっちかって言うと生のが強いかな。
マサル(金子賢)とシンジ(安藤政信)は学校では落ちこぼれで邪魔者扱いされているけど、意気揚々と自分達のやりたい事を見つけて、でも人生そんなに甘くなくて挫折して…。彼らの周りの人達もやっぱり明暗が分かれているのが現実味があるなぁ…って思う。
シンジはリベンジの為にボクシングを始めたのに、後から誘ったマサルに打ちのめされて自分に才能がない事を悟るんだよね。ただ、シンジはマサルを一切責めたりしない。そこが男気あってカッコいいなぁ…って思うんだけど。それなら自分は違う場所でてっぺん取ってやる!って生き方に気概を感じた。だからこそ、ずーっとシンジはマサルを慕っているんだと思うし。まーちゃんって呼びつつ、敬語なのがツボに入るんだよな。
若い時に観た時は、シンジに酒とか煙草勧めるハヤシ(モロ師岡)の存在が邪魔で仕方なかったんだけども、今観るとハヤシの不甲斐なさとかそういうのも何となくわかってしまって辛い。自分も未来ある若者だったはずなのに…いつの間にか落ちぶれて居場所すらなくなっている。だからって、先輩としては最低なんだけどさ…ちょっと昔とは違う目線で観れたので、やっぱり映画って面白いなぁ…って素直に思う。
ラストシーンもシンジとマサルは校庭で自転車二人乗りしてるんだけど、序盤に向かい合わせで二人乗りしているシーンがあって、なんだかその対比が面白い。絵的には序盤の方が当たり前に楽しそうに映るんだけど、圧倒的にラストの方がその先の未来を感じさせるから凄い。夢に破れても腕が動かなくても、まだ始まってもいないんだから。