【映画レビュー】東西ジャニーズJr. ぼくらのサバイバルウォーズ
一般的な映画と違って、こういう映画は本当にファンだけのために作られた映画で、ファン以外の人が見たら面白くないに決まっているのだから一般の方向けにレビューを書く意味はほぼないと思う。
みんな演技は下手です。ストーリーはクソです。唐突に歌とダンスが始まります。この世界に女の子はいません。
『東西ジャニーズJr. ぼくらのサバイバルウォーズ』 1.0
さて、それではいちジャニオタとして、一般的な視点を無視して個人的な覚え書きを残す。
デビュー組のファンなので、Jr.の知識はそこそこしかない。Lilかんさいは2020年の万博公園の配信で知って以来けっこう好きなのだけど、少年忍者は人数が多すぎてもう全員の顔と名前を覚えるのは諦めた。Lilかんさいと少年忍者の映画だと思っているけど、忍者の顔を全員把握していないので忍者じゃないJr.が混ざっていていても私はわからない。
演技はみんな下手だったけど、まぁ演技は歌やダンスに比べても上達幅が大きい。この映画みたいな将来の黒歴史になるような演技仕事も含めてたくさん経験しているうちに、みんなある程度上手くなる。下手な演技も今だけだし、存分に笑わせてもらった。
ストーリー自体は正直ポンコツなのだけど、この映画のキャラクターや構図などはかなり現実の東西Jr.を反映していて、それがけっこう面白いなと思った。
まず東西のボーイスカウトでダンス対決が始まる。東の12人と西の4人、こういう全然対等じゃないだろみたいな構図で関西が戦わされるのはよくある事で、関西Jr.はハングリーになっていく。不良も含めた3チームが警察官の介入で解散した後、西のボーイスカウトがちゃっかり新人を捕まえて帰っているのも大変関西らしい。
厳しい競争の中でマルチに才能を伸ばしていく東のJr.と、和気あいあいとした空気感の中で得意と不得意の差が激しい個性的な才能が伸びていく西のJr.。もちろん東のJr.だってみんな仲が良さそうだし、西のJr.だってピリピリした競争に晒されているだろう。あくまでも大まかな傾向だ。
忍者の年上組っぽい子たちが不良なのも象徴的だ。かわいかったちびっこJr.も、思春期になるとオラついた格好をする(全員じゃないけど)。そしてその中の一部の、こんなダサい事やってられるかという子たちがJr.じゃなくなってしまう。映画の中の「オマエ達みたいなキラキラした未来が待ってる訳じゃない」という檜山くんのセリフは、競争に敗れたりキラキラできなくなって辞めていったたくさんの元Jr.を重ねてしまう。
終盤の大人VS子どもの構図の場面は、演説大会始まっちゃったよ……とけっこう聞き流してしまった。世間の荒波に揉まれていない子どものキレイ事は大人には響かないだろう。大人になって世間の荒波に揉まれた後でそのキレイ事を言い続けられる、先輩達のような立派なアイドルになって欲しいなぁと思った。
この映画の主役は安嶋、斗亜、深田竜生の三人なのだろうけど、構造的には主人公は完全に斗亜だ。ガムシャラに先頭を突っ走って、でも浮いたりせずに周りと足並みが揃っている関係性が現実とリンクして見える。仲間の風雅くん、彪太郎、琉巧のおとぼけ3人組がめちゃくちゃかわいくて良い。この3人が面白いおかげでこの映画が成立している部分がかなりある。ニシタクは現実からちょっと離れたキャラだけど、ストーリー上やむを得ない。
西のボーイスカウトが魅力的に描かれ過ぎて、東のボーイスカウトが、特に安嶋が悪い印象になりすぎているのはちょっと気の毒だ。厳しく自分を律したおかげで仲間を救った、みたいな部分をストーリーに入れるべきだと思う。星輝みたいなキャラも、一番の役立たずがみんなを救いましたの定番があるのだけど、地獄耳っていう全く伏線を張っていない助け方をして驚いた。まぁ、こういう映画に脚本を期待しすぎるのは良くない。
東のボーイスカウトにいないなぁと思っていた檜山くんが不良のリーダーという重要な役柄で現れたのは嬉しかった。大人しそうなのにちゃんと不良やってるじゃないか、と感心した。深田竜生は王道のアイドルらしい見た目とアホっていう親しみやすいキャラでかなり期待している素材なので、この映画でも良い役どころを与えて大切に育てている事がわかって安心した。今やってるドラマもめちゃくちゃいいし。
エンディング曲で映画に全く出ていなかった忍者の主要どころが出てきて真ん中で踊っててめちゃくちゃ笑った。このハチャメチャさがジャニーズ映画の醍醐味なんだよなぁ。
『東西ジャニーズJr. ぼくらのサバイバルウォーズ』 3.0