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Shave off

ぬるま湯に浸した網状のスポンジに
石鹸を何度か滑らせ、空気を入れ込むように優しく揉み込むとふわふわの綿あめのようになった泡が出来上がる
 
それをこんもりと肌に盛り
泡のスポンジを押しつぶすようにおもむろに刃を当てる

ーShave offー

ヒフを傷つけないように
氷の上をそっと滑らすように
優しく愛でるように動かしていく
 
月に2回ほどの儀式は何故かいつも真夜中になる
時間に余裕がないとできないからでもあり、その秘密めいた儀式は手間暇かけてこそ美しさを作り上げると信じているから

うぶ毛は子どもであることの象徴でもあった
初めて肌に剃刀を当てた時、今まで気にもしていなかったソレを意識した
気にしなくても自然に体を護ってくれていた
なのに女としての欲が自然の摂理に反しても美を突き詰めようとする
それは、日焼け止めもつけずに無邪気に太陽の元で走り回っていた子供からの卒業でもあった
 
少し油断すれば肌に朱色の線を残す浅い傷 
故に感じる独特のヒリヒリした痛みは
漫然と女性であることに警告を発し、私が女であることを要求した
 
息を止め
指先に全神経をとがらせる
いけないことをこっそりしているような想いに駆られ、その緊張感が何とも言えない興奮を呼び起こし
胸のあたりの体温が1度上がるような気がするのだ
 
その行為の先には必ず私以外の誰かがいて、見られているという意識に直結している
それが誰と言えなくても
より美しく見られたいと
自分のあからさまな欲求に直面しているようでやっぱり恥ずかしく、誰にも知られたくない自分だけの楽しみとなっている
 
ー緊張と緩和ー
Shave offしたあとの肌
滑らかになった部分を何度も手のひらで味わい、まったりとしたJazzをかけて過ごす
そのあとのリラックスタイムがまた楽しい
 
全身に神経を行き届かせて
脱皮のごとく生まれ変わった私は
たっぷりとお気に入りのクリームを刷り込み、甘い香りに包まれてそのひと時に酔いしれる
 
こんな秘密の儀式もやっと今、楽しめるようになった
決して永久脱毛はしない
また2週間後のお楽しみと言いながら
飽くなき儀式が永遠に繰り返されることに女の業の深さと幸せを感じてしまっているのです

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