コロナ渦における今年度大学入試実施案 渡辺案 ver2020.05.27
議論の叩き台として
#9月入学本当に今ですか? という拙速な9月入学に反対するプロジェクトの発起人 渡辺由美子です。
とにかく、今年の高校3年生と浪人生は、今年の入試は一体どうなるのだろうと、気が気ではないと思います。そこで、9月入学移行は行わない(入試を来年度にずらさない)という前提で、今、私が考える今年度大学入試の対策について考えてみました。
あくまで私案ですが、移行をするのかしないのか、をとにかく早く決めて、こういう「今年の入試をどうするのか」をみんなで知恵を絞って、必要なコストはしっかりかけて早急に進めていく方がいいと思います。
また、もし9月入学にするとしても、以下の内容とほぼ同様の検討はしなければならないでしょう。来年の6月や7月になれば、時期だけずらして今までと同じ形式で入試ができるかどうかは、おそらく誰にも判断できない(少なくとも今年と同じ状況なら無理)のですし、この先また休校になるかどうかもわかりません。そんな中、9月入学だけが決まり、しかし、実際の試験日は、5月なのか、6月なのか、7月なのか、8月なのか、試験範囲も、試験の内容もわからず、結局各大学の判断に任せるようなことになれば、さらなる混乱は必至だと考えるのも、拙速な9月入学に反対の理由です。
1.共通テストについては、予定通り実施。私立大学入試についても原則日程の大幅移動は行わない
寒い時期の入試で大変ですが、だったら、それを5月や6月にずらせば、ちゃんとできるのかという保障はない。一方、学校や保育園でのパンデミックは見られないなど、どうやら、若者はかかりづらそうです。
それを踏まえて、たとえ、緊急事態宣言下で外出自粛であろうと、大学入試に関しては、特例として受験生の移動を認め、受験を行う。
とにかく日程を決めて、それに向けて最善の準備を今から始めるのがいいと思います。
2. ウィズコロナの新しい入試にかかる費用は、全額国庫負担で、大学側に十分な配慮を
3密を避けるために、従来の倍以上の会場の確保、それに伴う監督官などの増員、非接触型体温計等の設置、アルコール消毒やマスクなどの準備と従来に比べて、かなり入試の費用が増えます。これを各大学が負担するとなると、結局、受験料の値上げという形で受験生の負担が増えるので、このような措置に必要な費用は、国公立私立大学を問わず、全額国庫が補助を出し、大学も受験生も追加の経済的負担がない形で、十分にコロナに配慮した入試が行える体制を作る。
3. 試験範囲は選択制。点数ではなく、得点率で判定
悩ましいのが、試験範囲をどうするか。今年の3年生は、確かに学びきれない可能性も高い。入試の範囲を高2までを主体にするなど、様々な憶測があります。しかし、闇雲に試験範囲を限定すると、浪人生にとっては不利になる。そこで、試験問題を選択制にして、「もしかして学びきれないかも」という範囲は、解いても解かなくてもどちらでも良い。そして、判定は、点数ではなく、得点率で判定すれば、浪人生や私立高校で休校中も学べた生徒も、休校で学びが遅れる生徒もそれなりに公平になるのではないでしょうか。
選択制の場合の問題作成や難易度の公平性をどう保つか、などの課題は出ますが、共通テストでも毎年選択科目の有利不利などはあるので認められる範囲かと思います。
4. コロナやインフルエンザなどの理由で受験できなかった生徒のための追試験を2回〜3回行う
現在も、病気や事故など止むを得ない受験生のための追試験を行なっていますが、本試験との感覚が狭いので、コロナの自宅待機だと受けられない可能性が高い。ですので、これは、2週間以上の自宅待機をしても受けるチャンスがあるように、複数回を実施。
ちなみに今年の追試験者数は278人なので、これぐらいのオペレーションならそんなに負担なくできるかと。いちばんの問題は、数回分の試験問題を作ることでしょう。これには時間が必要。
5. 推薦入試、AO入試の拡大と、学力レベルの判定の補助として模試結果の利用を認める
そうはいっても、真冬に一般入試をやるのは大変だし、そもそも一般入試のあり方自体がこれからの時代にふさわしくないと私自身は思っています。知識偏重型の学力テストで良い点を取る、1点刻みで優劣を競っても、その力がこれからの社会で役立つのかどうか?
という点では、その学生の人格や社会への貢献(高校時代のボランティア活動を見たり)などを配慮して選抜するAO入試が主力になった方が良いと考えます。
日本のAO入試の最大の欠点は、「学力の担保」があまりないことで、これがアメリカのSATやイギリスのGCEのような、この学生は勉強はこれぐらいできる、という公的保障があるともう少し広げやすいのではないでしょうか。高校がつける成績表だけではなんとも心許ない。本来は大学入試改革でも共通テストは年に複数回行われて、 SATやGCEのようなものだったと思うのだが、いつの間にか、「センター試験がちょっと変わりました」みたいな感じになってしまったのは、非常に残念です。
が、大学側としては、やはりだいたいどれぐらいの学力があるのかは、確認したいところだと思うので、現状で一番それに適しているのは、大学入試模擬試験の結果だと思う。別に、この結果だけで判断するのではなく、あくまでも参考資料として添付したい学生は添付させる、というような扱いで構わないでしょう。学生は、自分の一番いい模試の結果をつけてアピールしてもいいし、つけなくてもいい。
日本には、模試という非常に大規模でそこそこ信頼性の置ける民間の学力判定システムがあるので、この先もわざわざ共通テストを複数回やるとかではなく、この模試でAO受ける、でいいんじゃないかなぁ、と個人的には思います。困窮家庭のために、模試の受験料の補助なども必要でしょう。
6.大学入試定員の厳格化の一時緩和
今年の入試(今の新1年生)から、大学の入試定員の厳格運用が行われ、このために、今年の入試はかなり厳しくかったと現場から聞いています。入試定員の厳格化自体は重要ですが、各大学がコロナに対応して、2次、3次と入試回数を増やすと、定員数の管理が非常に複雑になってしまう。
そこでコロナ対応の2次、3次試験の合格者に関しては、定員管理の人数から外すなど、大学側がある程度柔軟に対応できるようにすることが必要と考えます。
7. 4月&9月入学など複数入学への移行促進
すでに9月入学を行なっている大学も多い。9月入学にしたらグローバル化が進むというのも、時代が変わってそういうものでもないらしい。大学の入学と卒業時期はよりフレキシブルになっています。
そこで9月入学を新たに導入する大学には、国が補助金を出すなどで、複数入試に対応できるようにし、コロナを機に、大学のグローバル化を進めることで、「災い転じて福をなす」的な、ことにつながればいいなと思います。
以上、本当に素人の考えですが、一番重要なのは、こういうことを検討し実行するためにも、かなりの工数(人)や経費がかかります。なので、限られたリソースは、ぜひそこに集中してほしい。
そのためにも、#9月入学本当に今ですか?