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「奨学ナプキン」という広告キャンペーンのおかしさについて

⒈ 「生理の貧困」はナプキンの問題ではなく「女性の貧困」の問題

「生理の貧困」という言葉が、そもそも嫌いです。
生理の貧困
どういうことでしょう?

生理用ナプキンを買えないほど深刻な家庭が増えているのは事実。しかし、それは、「経済的貧困」なのであって、生理が貧困なわけではない。
貧困問題をどうするか?という正面からの議論を避けて、「生理」という、ちょっとざわつく言葉をくっつけてることで、さも国や行政が取り組んでいるようなふりをしているのが、あまり好きではありません。

本当に、生理の貧困に取り組むのなら、公共施設でナプキン配るのではなく、女子がいる家庭の児童手当に、毎月1000円/人上乗せすればいいのです。公共施設でナプキン無料で配りますというのは、本当に恥ずかしい事だと思います。

2.  奨学ナプキンという無料モニター大募集キャンペーン

嫌だなぁ、と思っていたら、今度は、奨学金ならぬ「奨学ナプキン」という言葉が目に飛び込んできて、正直ギョッとしてしまいました。

奨学ナプキンはじめます
https://www.elleair.jp/elis/meetmyelis-shogaku/

中身を見てみれば、なんのことはない、生理用品メーカーの商品モニターキャンペーンです。

1000人の女子学生に1年分のナプキンを配り、その代わりにアンケート調査に答えさせる。

ただ、そこに「生理の貧困」というエッセンスをまぶすことで、単なるモニター募集を、さも社会にいい事をしている風に演出しているように見えます。サイトを見れば、アンケートに答える女子学生のことを「奨学生」と呼び、「生理に対するあなたの気持ち」を応募時に書かせて、「選考」をして「奨学生」を決定し、年に2回無料でアンケートに回答しなければなりません。このアンケートの結果は、「発表」もされるようです。


3.  本来モニター協力者には、正当な謝礼が払われるべき

企業のモニターキャンペーンに協力してくれる人を集めるのには、ものすごくお金かかります。それを、キャッチーな「生理の貧困」という言葉を使って、社会貢献のようなアピールをしながら、実態は、商品モニターの募集である、という、非常に悪質な貧困マーケティングと感じます。
サイトを見ていくと

生理用ナプキンを1年間無償で配布する活動です。奨学生の方のナプキン返済や費用負担はありませんが、ナプキンを使った感想や生理の悩みについてアンケートへのご協力をお願いします。

ナプキン返済ってなに? 
アンケートに答えない学生には、ナプキンに利子つけて返せっていうこと?
費用負担はありません って、当たり前じゃないですか?
貧乏な女子学生が、ナプキン買えずに困っているからって、そこに漬け込んで、よくそんな上から目線で「ナプキンを与えてやっているぞ、有難がれ」みたいに言えるなと驚くばかりです。


4.  本来はモニター謝礼1万円/年+自社製品提供であるべき

冷静に考えれば、これは、「生理の貧困」という社会課題をうまく使って、「奨学ナプキン」というおかしなコンセプトで、お金がない女子学生を狙い撃ちにして、自社のマーケティングや製品開発の調査に自社製品のナプキンという薄謝で答えさせようという、非常に悪質な広告キャンペーンと思えます。

企業にとっては、モニター集めやアンケート調査にかかる莫大な費用が削減できて、1000人の女子学生のデータが取れて、いいことだらけです。さらに応募者として、その数倍のデータも取れます。なんの意図かわかりませんが、応募者の学校名なども応募時に取得されます。

もし、本当に貧困でナプキンの購入にも困るような女子学生をサポートしたいのであれば、「奨学ナプキン」というような珍妙なキャンペーンを始めるのではなく

エリエール 女子学生 商品モニター 1000人大募集!
謝礼1万円/年+自社製品ナプキン1年分

と、困窮女子学生にモニターの正当な対価を支払うべきだと思います。モニターを集めるために、調査会社に払う莫大なコストは、困窮女子学生に還元されるべきで、困窮女子学生に「奨学ナプキン」ではなく「奨学金」を支払うべきです。それが、正しいCSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)です。
奨学ナプキンキャンペーンは、残念ながら、企業のCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)でもなく、CSVでもなく、貧困女子学生に無料で商品モニターを行うという、CSRの仮面を被った、非常に悪質な貧困マーケティングだと思います。


5.  女子学生は、ナプキンがないことに困っているのではなくて、現金がないことに困っている

おそらく、奨学ナプキンというキャンペーンを始めたこの企業にも、悪気はないのでしょう。ただ、日本の貧困にについての理解が足りないのだと思います。
「生理の貧困」という社会課題があることを知って、自社の製品とのつながりから、「何かできないか?」という善意の発想からスタートしたのでしょうが、企画を進めるうちに、そして企画を通すために、社内から色々な事を言われて、最後に出来上がったものは、非常に悪質なものになってしまったと推察されます。

そこには、やむなく「貧困になってしまった人」の気持ちを考える人がいなかったのでしょうか?

「だったら、アンケートにも答えてもらおうよ。無料でアンケートも取れれば、なお良いじゃない。アンケート経費も削減できるし。」

それは、貧困層からのアンケートという労働の搾取です。
自分にとっては、都合がいいけど、相手にとっては、まして貧困状況にある人にとって、それはどんな気持ちなのか、どういうことなのか?を冷静に考えてみる人は、貧困層の方々の尊厳を、生理の貧困の社会課題の根源を考える人はいなかったのでしょうか?

ナプキンが買えない→企業からナプキンをもらう→アンケートに答える

これは、どう冷静に見ても、企業と貧困層はフィフティフィフティです。
奨学ナプキンキャンペーンはそこに、「お金がない女子学生へのほどこし」という概念を入れて、恩を着せてしまう。
貧困に漬け込んで、さもいい事をしているような顔をして、貧困層から搾取をすることを「貧困ビジネス」というのです。

女子学生は、ナプキンがないことに困っているのではなくて、現金がないことに困っているのです。


6.  ナプキンを無料で配る前に、給料を上げよう

コロナ禍で、非正規雇用の子育て家庭、失職や大幅減収をした子育て家庭は、本当に「ナプキンも買えない」ぐらい困っているのです。
一方、多くの企業はコロナ禍でも増収で株価は上がり、内部留保はひたすら増えています。
今日5月1日はメーデー「労働者の祭典」です
困窮子育て家庭の多くは、ワーキングプア。働いているのに、子どもにナプキンも買えないような生活しかさせられないことが、最も重要な問題です。
ちゃんと働いている人が正当な対価をもらえているか、
ナプキンを販売しているドラッグストアの非正規雇用の方はどういう状況なのか?
ナプキンを運んでいる運送会社はどういう状況なのか?
すべての企業が、そういう視点で、働く人の幸せを考えてもらえると良いなと思います。