日記:3月27日 危機に対する認識のこと
最近、2,3日に一度、インスタグラム・ライブをやっている。前から、アメリカの選挙情報を解説するようなライブをやりたいねなどとぼんやり話していたのだが、本格的に隔離ライフに入って、これは、今やるべきなのでは?となったのだ。
わりと勢いでぱっと始めることにし、一度めは、娘がアメリカに留学していて、渡航制限に散々悩まされていた真木明子ちゃんをゲストに招き、その経過でわかったことなどを話してもらった。やってみて気がついたのは、人とつながる、ということのパワーである。みんな不安なのだ、けれど、「みんな同じ船に乗っている」ことを確認することが、自分の心の平安の糧になる。「私はこうやって気を紛らわしてるよ」という情報の共有にもなる。初回が終わったとき、素直に「ああ、楽しかった」と思っときに、自分の体が喜んでいることに気がついた。
2回めは、DEPTのエリと弟分のるいくんが、アメリカの状況を私に聞く、という趣旨でやり、3度めは、トロントで料理人をする山中隆佑さんに話していただいたあとに、アドリブで、ジャマイカから音楽情報などを発信しているおかまいさんから、キングストンの様子を聞いた。
やっていくうちに、どんどん状況は切迫してきた。東京は、ロックダウンに入るのだ、という話も聞こえてくる。だから今朝「ロックダウン・サバイバル・ガイド」をテーマに、もう一度、エリとライブをやった。
私は、もう2週間以上、隔離生活をしている。外に出る経済活動も社交もやめた。日本の現状を見ていて、もっと真剣に受け止めたほうがいいのではないかと強く感じていて、それも、隔離ライブを始めた理由のひとつだった。エリは、店を閉める決意をしたこと、先のことは不安だけれど、なぜそうするに至ったかを話してくれた。そういう話をしている途中、「佐久間さんやエリさんは、素敵に生きてけるかもしれないけど、みんな必死に生きてますよ?」みたいなコメントがついた。
一瞬、ディフェンシブに考えかけた。「いやいや、私も日本との航路絶たれちゃったら、収入は激減なんですよ」とか、「半年先のことなんてわからない人生を送ってるんですよ」とか、そういうやつだ。「いや、私だって必死なんですよね」というやつですよね。
が、すぐにはっとなった。
そういう問題ではないのだよ。そして、とっくにそういう問題ではなくなっている。
ニューヨークのコロナ地図をみてほしい。10日ほど前(16日)にロックダウンを実施しても、現状はこうなのである。
Source: nyc.gov
コロナを抑え込みながら経済を守る、ということが選択肢と思われていた時があった。そして、今、それは選択肢ではなくなったわけだ。
半年後に、家賃が払えるかとか、食糧を買えのるかとか、そういうことを心配する段階は、私の中では、とっくの昔にすぎているのだった。
今、目の前にあるのは、私たち一人ひとりがj食えるかより、文明が、どれだけ多くの人が命を落とすことを防げるか、という課題なのである。そして、そのために、今、医療の最前線で、文字通り、自分の体を張って、戦っている人たちがいる。
おまけに、ヨーロッパやアメリカがコロナとの戦いに勝ったとき(勝ったとして)、それが終わる頃には、経済はまったく違う形をしているだろう。多くの職が失われ、「恐慌」と呼ばれる状態が長引くかもしれない。それは、おそらく回避できないシナリオだろう。もちろん、日本だって、百歩譲って、コロナの感染拡大を防ぐことに成功したとしても、経済的な影響は免れない。
私の立っている薄い地盤なんて、簡単にひっくり返るだろう。今、仕事をくれているクライアント企業や雑誌だって、潰れるところもあるかもしれない(実際に、すでにひとつ年間契約を失った)。そもそも、本や雑誌は、残るのか?書店は?ショップは?みんなが集まる場所は?
しかし、今、私のような人間が、それを心配してもしょうがない。今、驚くほどたくさんの数の人たちが、生死をめぐる戦いをしている最中に、日々、情勢が刻々と変わるなか、明日以降の世界を想像して心配することは無駄なのだ。今、考えるべきことは、感染しないこと、人を感染させないこと。そして、きっと人間たちは、この苦境を乗り越えることができるのだと信じること。
グッド・ニュースは、こと、このパンデミックに関しては、みんな、同じ船に乗っているということ。科学や医療やイノベーションの最先端にいる人たちが、今、存在する技術をこの苦境にどうアプライできるかに驚異的なスピードで挑戦している、ということ、そして、人間というものは、私たちが想像するより、きっとずっと強いということだ。
今、日々、人間の強さとクリエイティブさに感嘆している。ネガティブをポジティブに変える力、困った人たちを助けるためにあっという間にボランティアを組織するさま、お金をひねり出す発想、孤独を回避するための創意工夫、励まし合う力。「素敵」という言葉が当てはまるかわからないが、隔離ライフを、どういう気持ちで過ごしていけるかは、自分次第なのである。
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