日記5月5日:隔離と補償
3月はうちの会社で請け負っていた業務のほとんどが飛び、4月に予定していた日本行きの仕事も飛んだので、会社は休業にして、自分も生まれて初めて失業保険というものを受け取っている。最初は、まあランニングコストの小さい会社であるし、なんとかなるだろう、もらわなくても、と思いかけたのであるが、まわりのアメリカ人たちに「アホか」と言われ、よく考えたら、会社を立ててからまる14年間、失業保険を積み立ててきたではないか、と気が付き、ドヤ顔で受け取ることにした。アメリカでは、失業保険は「collect」するということが多い。積み立てられたものを「回収」するのだ。
今回の失業保険は、議会を通過した刺激対策法案によって、各州が、各人が稼いでいた額をもとに算出する金額に加え、週に国からの最大600ドルが追加されている。結果、普段稼いでいる額よりも、多い金額を受け取っている人がかなりいる。
この法案が追加したときの空気感としては「ヤバい!」というものだったし、その勢いでこの金額になったのだろうけれど、実際、自分が稼いでいた額より多い金額が振り込まれると、アメリカ大丈夫か、という気にはなる。実際のところ、失業保険を管理する州は、資金繰りが大変そうである。
ちなみに失業保険の受給は最大で26週間まで。7月31日以降は、追加の600ドルは撤廃されるようだ。
大判振る舞いすぎな気もするが、今、失業者がどんどん増える中で、経済全体が倒れないようにとの措置だろう。しかもこれで終わりではない。議会では、これから州への資金注入や、追加の刺激法案措置が議論されるらしい。なにより、ロックダウンの最中、働くことのできない市民の不安を軽減する効果は、少なくとも今のところは、発揮しているように見える。
とはいえ、こうした措置から漏れる人もいる。今回、フリーランサーが、失業保険の受給対象になったのは画期的だったが、ステータスなしの労働者は漏れてしまうのである。ニューヨークやカリフォルニアのように、こうした労働力に頼っているところは、彼らを救済するための措置も敷いている。
前にも書いたように、今、前線で働いている人々の賃金は、最低賃金か、またはプラスアルファの額くらいである。そもそも命をかけるタイプの職種ではなかった人たちが、社会全体がスムーズに進行するために、体を張って働いている、それも最低賃金で。それについても、追加の賃金を国が補助する議論が進行している。
と、補償の現状を書いてきたが「アメリカこんなにやってくれてる!」ということを言いたいわけではない。たとえば欧州の一部の国(たとえばドイツ)に比べたら、アメリカ政府が手厚いわけではないことがよくわかる。
この2ヶ月の間に、台湾、中国(上海)、ニュージーランド、カナダ(トロント)、イギリス(ロンドン)、ドイツ(ベルリン)、スペイン(バルセロナ)の日本人たちとつないでインスタライブをやり、各地の状況や補償の内容について聞いてきたのだが、これだけ、誰がトップに立って、どういう意識で政策を立てているかで、国民が受ける待遇が、天と地ほどにも違うことに愕然とする。
それなのに、我が国の政府は、ロックダウンに強いリーダーシップを発揮することもせず「自粛を要請」というそもそも矛盾した言葉を使って、指示を出すことからも、補償をすることからも逃げ回りながら、「わが国の支援は世界で最も手厚い」とか、「事業者に直接補償する国はない」とか、嘘を重ね、国民に責任を押し付けようとしている。社会保障のために、国民が払った税金は、国民を守る結果にはなっていない。個人事業主や個人商店、シングルマザーやDVを受ける女性など、政府の乏しい想像力に入っていない国民は守られない。この未曾有の危機に、国民を救済するのではなく、できるだけ策を講じずに、やり過ごしたいという態度が見え隠れして、不安になる。
どうして日本人は、怒らないのだろう? と考えたところ、この各国の待遇の差が、きちんと報道されていないからではないかと考えてみた。実際、各国の補償の内容が比較されている記事を見つけるのは、簡単ではない。
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?