日記 4月12日 アメリカの国勢調査
コロナ禍のさなか、アメリカでは国勢調査が進行している。10年に一度行われるので、私にとっては3度めの体験である。2000年の国勢調査のときには、家に調査員が来た。2度めは、郵送されてきたフォームを返送した。国勢調査というものは、合衆国憲法で国民は答えなければならない、と定められているうえに、アメリカ国内に存在する世帯がすべて対象になるため、不法滞在だろうと、外国人だろうと答える義務がある、ということになっている。国勢調査は、それぞれの地域にどれだけの予算が必要かとか、病院は足りているか、とか、選挙区の大きさとか、国民・住民の暮らしに関わる様々なことを決めるためのベースになるため、とても重要なことだと言われている。
だからニューヨークでは、国勢調査に答えるようにというキャンペーンが行われている。今回はCardi Bも参加している。
とはいえ、国勢調査には絶対答えたくない、という人も増えているという。実際のところ、トランプ政権が、今回の国勢調査に「あなたはアメリカ合衆国の市民ですか」という質問を含めようとし、この戦いは法廷に持ち込まれて、結局、この質問は含まれなかった。とはいえ、イスラム教国の渡航を制限しようとしたり、不法移民の家族をバラバラにして隔離したりするような政権である。そんな政府に自分の情報を利用されてたまるかという人や、政府に情報を握られることを恐れる移民の家族がいるのもうなずける。
実際、歴史をたどると、日本軍による真珠湾攻撃のあと、日系アメリカ人たちが強制収容所に入れられたとき、アメリカ政府は、国勢調査のデータを使い、カリフォルニア州のヘルプを得て、日系人の場所を確認し、収容を実現したのだという。つい最近、カリフォルニア州がついに日系人コミュニティに謝罪するというニュースにもなっていた。
国勢調査のデータを他の官庁や共有することを禁じる法律が1954年にできてからは、国勢調査はあくまでも人口調査のため、ということになってきたが、現政権の方針を見て、特に中東系、ラテン系の住民の中には、国勢調査に抵抗のある人が多いのもうなずける。ところが、国勢調査の結果が実際の人口よりも大幅に少なくなると、その人の属するコミュニティにまわる福祉も縮小される。国勢調査には、独立した監視団体もあるし、法律で「データは共有できない」ことになっているのだから大丈夫です、というコミュニティのリーダーたちは「今こそ国勢調査に答えて、自分のコミュニティの存在意義を主張するときである」と主張している。国勢調査に答えることは不安でも、しないと恩恵は与えられない。
そういえば、自分のところにも国勢調査が来ていたが、まだ時間があると放置しておいた、今日こそやろう。
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