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[TeaTime #10]イギリスの生活ってどう?『英語の苦い経験:職場編』
イギリスの大学院を卒業して、ある大学の図書館職員の仕事を得ることができた。100名を超える応募者の中から英語話者ではない私が選ばれて、英語のハンディキャップを考えると「なぜ私が?」不思議に思った。
私以外は全員イギリス人の職場で、私の仕事は学生や教授や一般図書館ユーザーに情報を与える仕事。つまり、英語のスピーキング、リスニング、ライティングをふるに使う仕事だった。
私はイギリス人たちと同等のレベルの英語で、同じスピードで書いたり話したりしなければいけなかった。見た目はアジア人だが、お客さんは私にそう期待していた。その時の緊張とストレスは半端なかった。失敗したり、自分を責めたり、苦しかったことは沢山あるが、その中から忘れることができない経験を一つ紹介したい。
初老のお客さんをかんかんに怒らせた。
外国語での電話応対ほど緊張し難しいことはない。当然私も仕事の一つとして電話応対もしなければいけなかった。初めて電話が鳴った時のあの緊張は今でも覚えている。これは、大学卒業後就職した日本の会社で初めて電話をとった時の緊張に似ている。
恐る恐る電話を取り、電話口から、初老のお客さんの声が聞こえてきた。緊張しながらその声を必死に聞き取ろうした。でも、緊張のあまりしどろもどろなになり、その初老の男性は、私に不信感を抱き、電話口で非難を始めた。挙句の果てには、「貴方が今私に言っていることを信用できないから、XXの住所にその内容を書いて送ってくれ!」と怒鳴られ電話を切られた。
その直後、あまりにもショックすぎて悔しすぎて放心状態だった。顧客対応は日本の金融会社で9年間働いて培った自信もあった。日本語でなら日本的な素晴らしい顧客対応ができたはず。でも英語だったから、なんだか自分が馬鹿に思えて悔しくて悔しくて仕方がなかった。
でも、それに負けなかった。イギリス人上司に何が起こったか隠さず正直に説明し、丁重にその男性に封書を送った。上司は私を攻めないで、初めて仕事で封書をお客に送る私を優しく指導してくれた。(この上司は最高の上司だった。後の記事で書きたい)
その心の傷が癒されてきたある日、大学図書館の窓口に座っていると、ある初老の男性が笑顔で私に近づいてきた。
「貴方はあの時(電話)の方ですね?」
一瞬なんの事だかわからなかったが、あの声で思い出した!あのとき怒鳴られて手紙まで書かせたあのお客さんだ!
「手紙を頂きました。ありがとう」と笑顔の初老の男性は、とても電話のあの男性と同一人物と思えないくらい優しく友好的だった。
その後、ちょくちょく大学図書館に来ては、私のところで暫く立ち話をするようになった。彼が好きな作家さんを教えてくれたり、日本のことを聞かれたり。最初の電話での出会いとはうってかわって、私にとても優しいお客さんになった。
人間って電話と対面して話すとでは、こうも違うのかと思った。電話は相手の顔が見えないから、難しいコミュニケーションツールだ。
ちなみに、日本人留学生が図書館の窓口に座っている私に、
「留守番電話で何を言っているかわかりません。代わりに聞いていただけませんか?」と。
電話は難しいよね。