試験英語って悪いの?
昨今「大学入試問題」の議論が繰り広げられている中、
「受験英語は使えない」や
「日本人が英語を話せないのは受験英語のせいだ」など
受験英語は「憎むべし存在」の汚名を着せられているようだ。
受験英語ってそんなに悪なのだろうか?
英国大学院修士課程の「Testing」の授業で大学教授が言った言葉がとても印象深く残っている。
「どんな試験も試験自体は悪ではない。その試験の結果を何か評価するために使う人たち(企業や教育機関)が、それを適切につかっているかなのだ」
日本での「受験英語が悪い!」と一方的な試験批判に慣れていた私に
別の見方に気づかされた瞬間だった。
今回は、大学入試英語ではなく、
英語資格試験から「英語試験」について考えて行きたいと思う。
留学などで英語圏で生活する環境では、「英語学習」のモチベーションは保たれ、英語能力の向上を肌で感じれるが、
日本で英語を勉強し続けるには、モチベーションがかなり強くないと
なかなか続かない。
そこで、英検やTOEICと言った英語試験は、学習者の英語上達を数字で可視化できるので、英語学習モチベーションの一つになる。
そして、TOEICなどの点数を必要用件にする企業や大学も多々あるので、
こういった英語試験受験熱も理解できる。
私も「英語教員採用試験英語一次試験免除」のため、33歳から35歳までTOEIC(Reading Listening)を受験し続けた。
TOEIC自体悪い英語資格試験ではない。
どんな試験にも長所と短所はあるからだ。
あれだけの莫大な数の受験生を迅速に公平に信頼性(reliability)にテストするには
選択肢質問の客観試験だろう。(それは大学入試センター英語にも言えること)
ここで問題となるのが、
「試験結果を採用や入学(High Stakes)などにつかう企業や教育機関の人たちが、
英語試験がテストできるスキル(constructs)をどのくらい理解しているだろうか?」
たとえば、TOEICのReadingとListening試験だけの点数を考慮する場合、
もしある企業が求める「英語ができる人材」を
1)「迅速に英語の書類が理解できるスキル」と
2)「英語を聞いてすぐに内容が理解できスキル」と定義するならば、
TOEICのReadingとListening試験は適切かもしれない。
しかし、同じTOEICのReadingとListening試験の結果から、
「英語で話すスキル」や「英語で企画書やメールなど何かを書くスキル」があるかまで知りたい(予測したい)のであれば、
残念ながら、TOEICのReadingとListening試験からはそれは難しい。
なぜなら、Speaking(実際に話す) とWriting(実際に書く)スキルをテストしていないからだ。
例えば、
TOEICのReadingとListening試験である程度の点数を取った人のグループには
1)ReadingとListeningスキル同等にSpeakingとWritingのスキルもある人
2)ReadingとListeningスキル同等にSpeakingとWritingのスキルがない人
が大きく分けて存在するであろう。
残念ながら、TOEICのReadingとListening試験だけだと、この二つのグループを差別化できない。
私自身「英語教員採用試験」に合格する強い目的達成のもと、
TOEICのReadingとListening試験の対策に集中して勉強していた時期がある。
たとえ当時TOEICのReadingとListening試験で合計800点は超えていたが、私の英語全体の能力はグループ2に入っていたと自己評価する。
つまりバランスの悪い英語学習の仕方で、SpeakingとWriting能力は伸びなかった。(これらの能力は英語教諭になるために必要なスキルなのに)
長くなったが、そんな反面教師の私からのメッセージ:
人それぞれ英語を学ぶ目的は異なる中、
どうして英語を勉強しているの?英語で何をしてみたいの?を知ると、
自ずとどんな英語能力をつけたいのか見えてくる。
たとえば、
①本を読むのが大好きだから、英語の本も読めるようになりたいなら、Readingスキル。
②英語で書いて何か発信したいのならば、当然Writingスキル。
③人が英語で話しているのを理解したいのならば、Listeningスキル(英語の発音のきまりを知るのも大事)
④英語でコミュニケーションを取れるようになるには、Speakingスキル、当然Outputの練習をする。ここで大事なのが、Output練習だけでは不十分。自分の知らない単語や表現は、私たちの頭から自然に沸いてくるわけではない。だから外から情報を頭にInputしなければ表現は増えない。
つまり、英語でコミュニケーションを取れるようになるには、これらの全てのスキルが必要、スキルの集大成なのだ。
最後に、モチベーションをキープしながら、日本で英語学習に頑張っている人たちにエールを送りたい。(トップの画像は、夏至のイギリスは夜8時過ぎでも明るく、昨日夜に森を散歩したときに突如現れたウサギたち。ピーターラビットの世界)