フェリチン値7だけど 山に登りたい

 昨年夏に立山に登り、その美しさと偉大さに圧倒され、今年に入り、早々に立山町にふるさと納税をした。使途は登山道整備ということで、山小屋で使えるクーポン9000円分が返礼としてきた。自分の好きな山の応援ができて、さらにクーポンまでもらえるとは素晴らしい。クーポンがあれば遠くてもきっと足を運ぼうと思える。絶対来年もしよう。

 そう言っていたのに、夏は剥製だらけの某宿に泊まり調子を崩してしまい、立山に行けたのは10月後半になってしまった。通常なら10月後半なら吹雪いている頃なのに、今年は残暑が続いたため積雪はなかった。

 雷鳥荘に泊まると、夕食のテーブルはソロの人たちを集めてくれていた。
 「どうしてソロなんですか?」と聞かれ、「私、すごく歩くのが遅くて、みんなと一緒のペースで歩けないんです」と言うと、意外にも他の方たちもそうなのだと言う。話は弾む。お決まりの「一番好きな山はどこですか?」という会話をするときは楽しい。本当に楽しい。
 硫黄岳と月山をお勧めされた。私は秋田駒ケ岳をお勧めした。楽しみがまた増えた。

 私が遅いのはここ数年極度の貧血で、昨年の検診時のフェリチン値はなんと7だったからだ。それまではむしろ荷物を軽くして速く登って速く降りるのが好きだった。走るくらいに。

 雷鳥荘は高いところにあるから、地下1階の食堂から1階の部屋に戻るのにハーハー息が切れる。それを見た同じテーブルだった方が「大丈夫ですか」と心配そうに見てくる。
 大丈夫です。ね、こんな風に息が切れてしまうんです。
 その方は医療関係の仕事をしているということで、私がフェリチン値が7だというと驚いていた。少しお話しして、医療関係のお仕事をしている方だということはすぐに分かった。
 翌日、その方と少しだけコースが重なっていたので一緒に歩いた。驚いたことに、その方も息切れで、本当にあまり早くは歩けないのだった。確かに夕食のテーブルでそのように言っていたのに、私はそんなことはなかろうと思っていたのだ。でも、そうだった。 
 帰り、また偶然その方と一緒になって、雷鳥沢のキャンプ場のベンチでチョコレートとクッキーをごちそうになった。そしてゆっくりゆっくりふたりで雷鳥荘まで戻ってきて、コーヒーとアップルパイを食べた。
 その方とはそのままそこでお別れしてしまったけど、連絡先を聞いておけばよかったと思う。山での出会いは心に残る。
 
 帰って来て、私はちゃんと貧血を治そうと思った。とりあえず鉄サプリを飲み始めた。鉄サプリは以前も飲んでいたけど全然効かなかったので、今回は効きそうなものを選んだ。

 絶対に無理はしない。ゆっくりゆっくり登る。貧血が改善してもしなくても山に行こう。山登りがなかったらどんなにつまんない人生だったろうと思う。
 
 山に登っていると私より年配の方もたくさんいる。無理しない計画を立てれば長く楽しめる趣味なのだ。ピークを目指さない歩き方や地元の里山を楽しむ歩き方もある。幸いにして私はピークハンターでもないし、森の中を歩きたいだけだったりするので、近所の里山でも幸せだ。

 

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