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飾る

 美術館が好きだ。展示物はもちろん、椅子や照明などのインテリア、さらには建物の建築にも心がときめく。趣味は美術館めぐりです、なんて言うのはおこがましいけれど、いつも気になる展覧会がたくさんあるから、帰りに立ち寄ったり、休みの日には美術館をはしごすることもある。

 展覧会の後には、ポストカードを買うのがお決まりだ。展示されていた作品や、美術館の建物が描かれたもの。本物の作品を手に入れるのは少々ハードルが高いけれど、ポストカードなら手頃な値段で嵩張らない。そして、お気に入りの一枚を見つけてきては、家の壁に貼って飾っている。かわいいポストカードでわが家の壁を飾るのが、今の密かな愉しみなのだ。

 先日『17歳の肖像』という映画を観た。パリに憧れる主人公の少女は、豪奢な大人の世界に導かれ、盲目的な恋に落ちる。恋物語のはてに、彼女はとある部屋に足を踏み入れる。その部屋に並ぶ書籍は、廉価版ばかり。壁を飾るのは絵画を模したポストカードだった。しかし、派手なパリのカルチャーや生活に憧れていたはず彼女は、自分の本当の理想を、そこで見つけることになる。

 映画を観ながら、新しいアイデアを思いついた。ポストカードだけでなく、展覧会のフライヤーも壁に飾ってみよう、というものだ。フライヤーにもかわいいものが多い。だから美術館へ行くたびに頂いてきては、大切に保管している。早速、これぞ、という一枚を飾ってみた。うん、やっぱり素敵だ!  

 今のわたしには、豪奢な豊かさは似合わないと思う。それでも居心地のいい空間を作りたい。だからポストカードを飾ってみたり、100円ショップで買った額縁に、自分で撮った写真を入れてみたりしている。目指すは、シンプルで上品で、今の自分にしか作れないお洒落さ。自分だけの本物の豊かさ。わたしにも見つかるといいな。

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