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私の部屋には、男の霊が住んでいる。第一話【note創作大賞2024】


あらすじ
私が幼稚園の年中だった時、住んでいた社宅から新築マンションに引っ越した。私は自分の部屋を与えられて喜んだが、遊びに来たみっちゃんだけは違った。「害のない男の霊がいる」幽霊が視える従姉妹のお母さん、みっちゃんが私の部屋を見て言った。そこから、幽霊がいる世界に魅了され惹き込まれていく私のアンソロジー心霊推理小説。


第一話


 私が幼稚園の年中だった時、住んでいた社宅から新築マンションに引っ越した。私は自分の部屋を与えられて喜んだが、遊びに来たみっちゃんだけは違った。

「害のない男の霊がいる」

 みっちゃんは従姉妹のお母さんだ。霊感があってみえる人。お盆の時期になれば田舎のおばあちゃん家で親戚一同、詠歌をあげる習慣があるのだが、その時に帰ってきたご先祖様の姿をよくみるらしい。らしい、と言うのは私には霊感がないからだ。だから、私にはいるという『害のない男の霊』はみえない。

 霊と一緒に暮らしていれば、霊感が目覚めることがあるのだろうか。そんなことを最近思うようになった。なぜ、そんなことを思ったのか、それは先日ハッキリと霊をみてしまったからだ。

 私は小学校一年生の頃から目が悪い。目の視力は両目とも一もなく、コンタクトレンズは右が0.09と左が0.08。レンズを外してしまえば、今入力をしているノートパソコンの字さえみえない。白い画面に黒いもやもや。そんな視界で生きている。

 それは深夜の二時頃だった。いつも通りスマホで動画投稿サイトにあるピアノの演奏メドレーを流しながら執筆をしていた。時々、流れるコマーシャルをスキップしながら音楽を聴き、再生が終わった時には深夜二時を過ぎていた。今日は仕事があるからそろそろ寝るか、とパソコンをシャットダウンして閉じる。

 イスに座ったまま背伸びをしていれば、イスが傾き転げ落ちそうになって慌てて身体を起こす。あくびをしてからイスの上に立ち、近道をしようと隣接する二段ベッドにまたがった。

 そのままゴロリ、と寝転がりメガネを外す。長時間、パソコンの画面を見て目が疲れたから買い置きしてある蒸気が出るアイマスクをつけた。電気のリモコンを手探って電気を豆球にした。

 私の部屋はよく物音が鳴る。多いのが天井で上には部屋がないのにパキリ、と何かを割ったような主張してくる音がよく鳴る。それもあって、音楽を流していた。無音だと音がよく聞こえて怖いからだ。そのため、二段ベッドで電気に近く豆球が眩しく感じても真っ暗にするのは怖かったから、豆球をつけていた。そしてうとうとしかけていた時にみてしまったのだ、生首を。

 生首は私の右手付近で浮いていた。生首の姿は白く、真実の口のようなパーマがかった白髪のおじいさんだった。最初、夢だと思った。だって、アイマスクをしているからみえるはずがない。それにメガネを外しているから裸眼だ。

 豆球があるとはいえ、こんなハッキリと姿がみえるはずもない。この距離で裸眼で見るとのっぺらぼうになる距離感だ。だから、これは夢だ。私は好奇心で触ろうと手に力を入れた。

 すると、隣の部屋から物音がした。父か、もしくは母がトイレに行こうと起きた物音だった。廊下を歩き、トイレの水が流れる音までハッキリと聞こえた時点で、これは夢ではないと気づいた。

 手を上げそうになった力を抜き、目を強くつむった。それでも存在が気になってうっすらと目を開ける。心臓がドクドクと速く鳴り、寒いはずなのに汗が止まらない。自然と口を一文字に結んで息を止めていた。そして、アイマスクの隙間からこっそりと覗くように姿を確認しようとする。

――やばい、目があった。

 視力は悪いはず、それなのに目と認識できる。目のふちどころか、輪郭までわかる。生首の霊も私がみえることに気づいたようで、私に向かって話しかけてきた。だが、それは口パクのみで声や音は聞こえない。ただ、必死な表情でまくしてている。

 私は怖くなり、身体ごと背を向けた。不思議と金縛りはなく、動くことができた。だが、生首の霊も存在を認識した私をそう簡単には逃がしてくれない。私の耳元にまで近づくと話しかけているのか口を大きく開いている。私は絶対に目を開けるもんか、と目をぎゅっとつむった。それでも私の右耳に吸い付くようにそこにいる。何かを伝えようとしている。だけど、私は聞きたくない。聞こうともしなかった。

 うずくまりながら汗をかいている内に、いつの間にか気を失っていたようだ。スマホのアラームで目が覚める。全身汗をかいた状態で私はアラームを止めて、カーテンを開けた。冬だからか、まだ朝日は昇っていなくて暗いまま。振り返れば生首の姿はなく、どこかに消えていた。

第2話:https://note.com/yumiha_/n/n8378bb80eada?sub_rt=share_pw

第3話:

第4話:

第5話:

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第7話:

第8話:https://note.com/yumiha_/n/na4f0548f1ba7?sub_rt=share_pw

第9話:

第10話:https://note.com/yumiha_/n/n4eeb5151d688?sub_rt=share_pb

#創作大賞2024 #ホラー小説部門




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