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第五話 不自然な光【note創作大賞2024】

 幽霊は私たちと別の周波数に存在しているらしい。その周波数と合った時に姿を現す。

 中学生の時に3歳で飼っていたおばあちゃん家のイヌが亡くなった。寿命だった。柴犬と黒いイヌの雑種でキツネのような耳に、つぶらな瞳、背中の真ん中辺りの毛が黒いイヌだった。

 噛むことはなく、怒った時は噛むフリでやさしいイヌだった。私にとって家族のように大好きなイヌでした。名前はレディ。従姉妹がつけた名前です。

 桜が咲き始めて、中学校の入学式が終わった数日後。おばあちゃんから電話があった。

「レディ、死んじゃった」

 年齢もあったし帰省した際に撫でると身体が骨張っていたので覚悟はしていた。だけど、もう会えないとわかるととても悲しい。生前、誰もいない公園の広場で一緒に駆け回ったことを思い出して泣いた。

 その日の夜、私はベッドで寝ていた。電気を消して、目をつむる。目に眩しい光が射すかのように痛みを感じた。両親のどちらかが気づかず内に寝室に入ってきて、電気をつけたのか。

「うっ……」

 私は手で目を覆いつつ、目を開ける。寝室は真っ暗のままだった。

「あれ……」

 それでも眩しい光は存在している。私が寝ているななめ右奥に光源が存在していました。嫌な感じはなく、光は二つ存在しているように見えます。当初はレディかと思いました。それでも私には霊感はなく、姿をとらえることはできません。

「レデイ……?」

 名前を呼んでも、丸い光がそこにあるだけです。返事代わりに動きもしてくれません。試しに触れば何か反応してくれるかと、手を伸ばしますが何も起きませんでした。ただ、寄り添うように私のななめ右奥に居座っています。光がまぶしくて眠れませんでした。

 朝、起きると何もありません。ですが、悲しいと思う気持ちはどこかに消えていました。忘れかけていた光の話を思い出した理由は、とある動画を見たからでした。

 動画投稿サイトにあった1本の動画。そこにはこの映像を見たら日本人形の霊が遊びに行く、という内容のものでした。

 画面に映る日本人形はスマホ越しでも気味が悪く。背中がゾクリ、と震えました。赤い着物にパッツンの前髪、腰まで伸びた髪の毛。肌は少しくすんでいるように見え、時代を感じさせる日本人形です。

『この子を見た人は絶対お家に遊びに行くので覚悟してくださいね~』

 動画投稿者の男性は呪われてもおかしくないヘラヘラした笑顔で笑っています。

「そんなもん、嘘やろ」

 私は半信半疑でその映像を見て楽しみ、何も起きることなく映像は終わりました。

 そして動画を見たことを忘れた夜に、日本人形は私のところに遊びに来たのです。

 ふと、何かの気配を感じて起きました。スマホを手探りで探して起こせば、午前二時。

「最悪……」

 草木も眠る丑三つ時に起こされることは、きっと何かが起こる前触れです。寝る前に見た日本人形がくる動画を思い出し、身震いをしました。

「ん?」

 視界の片隅で何かが光ったような気がしました。光った何かは移動しているようで、訴えかけるように目に情報を送り続けています。でも、川で連れ帰った何かのように悪いものではない。そう直感的に感じて、天井を見ました。

「あ……」

 丸い光がビュンビュン、と忙《せわ》しなく八の字に動いていました。

「お人形さん……?」

 人形の姿は見えません。亡くなった愛犬が光となって私の枕元に来た時に見た光と同じ光でした。

「優しいお人形さんなんだね」

 数億ある動画のうちの一本の動画を見た。五十万再生された動画だった。お人形さんは一人一人の家をサンタクロースのように周っているのだろうか。

 『お人形を見たら家に行く』誰と約束したのかは分からないが、健気なお人形さんに思わず笑ってしまった。

 本当は怖い現象のはずなのに、なぜか怖くない。それは私が大人になったからなのか、それとも怪奇現象に慣れてしまったからなのか、私も幽霊と波長が合いつつあるのか……。

#創作大賞2024
#ホラー小説部門

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