臨死の常連
〜2020年9月5日(土)〜
柳家わさびさんの独演会。
わさびさんはテレビでもちょいちょいお見かけする真打さん。ご自分でも言っている、線の細い、弱そうな、死神が似合う感じ。
わさびさんの落語が好きで。人の描写が老若男女誰をとってもうまい。個人的に低音のB系の若者男性を演じてるのが好きで、きっとわさびさんヒップホップが好きなんじゃないかな、と思ってる。オネエっぽい花魁も、遊び人も、臆病な若旦那も、どの人物も自分のキャラを効果的に使いながらはっきり別々の個性として演じきれる。観客を引き込む雰囲気の作り方も独特でうまいんだなぁ。すごい魅力的。
今日の独演会。最後の「臨死の常連」はとてもいい噺だった。
胸に詰まる泣ける噺。
人生を考えさせる噺。
最後の最後がとても感動で、地獄の門の前で馴染みの鬼に見守られて門をくぐろうとする=死を受け入れる時の心理描写がすごい。
「最後に人を助けられた、それが自分の人生の唯一の誇り。だから死ぬって言うのに満面の笑顔だ。」
人と比べて出来がいいとか悪いとか、順位とか評価とか、相対的な結果が大事なんじゃない。自分のやったこと(生き方)に対する自分自身の評価が最期に自分の人生の満足度を決める。
噺はどこにも説教くささはなくて、論理の飛躍もなくて、自然な流れで、鬼の人情にも絆されながら最後の感動につながっていく。
生きることに手を抜かずに、人生で自分に何ができるか考えたいと思わせる作品。
また行こう。
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