status quoを変えられる人
私は昔から、status quo (ステータス・クオ) を変えられる人に憧れている。
ライト兄弟やキング牧師、スティーブ・ジョブスやアインシュタイン。
ベタだけど、やっぱりかっこいいと思う。
”status quo” は「現状」と訳されるが、
使われ方として、
「常識とされている考え方」
「自分の現状(周囲から与えられた役割)」
という2つの現状があると思う。
例えば、有名なappleのCM「Think Different」
The ones who see things differently.
They're not fond of rules.
And they have no respect for the status quo.
世界を変えるクレイジーな人(天才)について、
”物事をまるで違う目でみる人たち、規則を嫌い、現状を肯定しない”
と表現している。
ここでいうstatus quoは
「世の中で常識とされている考え方や物事」のこと。
私が高校生の時にハマった、
Disneyの「ハイスクール・ミュージカル1」では、
学校一の人気者のバスケ部キャプテンがミュージカルをやろうとすると、
学校中の人に”ミュージカルなんてキャラじゃないからするな”と批判され、
こんな歌を歌われるシーンがある。
Stick to the stuff you know
If you want to be cool,
follow one simple rule
Don’t mess with the flow, no no
Stick to the status quo
いつも通りのお前を貫け、
かっこよくいたいなら、
流れを乱すな、
現状を維持するんだ
新しいことをしようとする人を異端者として
反発が起きている状況を表現している。
ここでのstatus quoは
周囲の人から肯定されている自分のキャラクター(役割)、
つまり「自分の現状」という意味でstatus quoが使われている。
・世の中の現状
・自分の現状
これらのstatus quoに挑戦し続けている人こそ
私の憧れの人である。
知り合いの中で当てはまる人はいないだろうかと考えた時に、
百束さんの顔が浮かんだ。
百束泰俊(ひゃくそくやすとし)さん
JAXA(宇宙航空研究開発機構)主任研究開発員であり、
「株式会社天地人」*3 のCTO。
私が「素敵」だと思う人。
百束さんに初めて出会ったのは約3年半前。
宇宙イベントで知り合ったJAXA職員の方から、
「JAXAにね、おもしろい人がいるんですよ!」と紹介された。
当時百束さんは衛星開発のシステムエンジニアだった。
エンジニアというと研究室にこもっているイメージだったが、
百束さんは違っていて、
アクティブに他業界の人と意見を交わす気さくな方だった。
一番びっくりしたのは、エンジニアなのに、
DPR(二周波降水レーダ)の紹介アニメ*1 とゲームアプリ*2 の
制作に率先して動き、
ディレクションをしていた話を聞いた時だった。
あのハイスクール・ミュージカルの曲が頭の中で流れる。
エンジニアさんが紹介アニメのディレクションをするわけがない
という私の偏見。
百束さんは周りや会社の人から与えられた枠からはみ出して、
いろんなことに挑戦する人だった。
おそらく普通に考えれば開発員が
紹介アニメのディレクションを行ったりはしないだろう。
1年半ぶりに先日、百束さんに会った。
ちょうど今年5月に「株式会社天地人」を立ち上げたところで、
お話を聞くのにはちょうど良いタイミングだった。
天地人は、「宇宙からの情報を使い人類の文明活動を最適化する」
をvisionとして掲げ、
衛星データを活用した土地評価エンジンを提供している。
天地人の土地評価エンジン
気象情報・地形情報などの衛星データを活用して、世界中の土地を評価。いちごやオレンジの栽培、ソーラパネルや空港を設置する場所として最適な場所を世界中から見つけることができる。
今までは土地ありきで
そこに何を栽培するかを考えることがstatus quoだったが、
このエンジンを使えば、
栽培したい作物にとって最適な場所を探すことができる。
このサービスは「世の中の現状」を変えるソリューションだ。
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アニメのディレクションと、天地人のソリューションで、
百束さんが世の中と自分の現状に挑戦している人ということを
感じとれたのではないだろうか。
それではなぜ百束さんはstatus quoを変えられるのだろうか。
百束さんが持っている力について考えた。
(1)視点
(2)企画力
(3)調達力
(4)突破力
(5)侵略力
(1)視点 <課題の見つけ方>
JAXAでは普段「人類のために」という仕事をしてきた。
一方、天地人では具体的な顧客をイメージして
プロダクト開発を進めているという。
広い視点と、具体的で深い視点、
この両眼で課題を見つけることが身についている。
世の中の常識を立体的に考察することができ、潜在的課題を顕在化できる。
(2)企画力 <解決策を導き出す>
答えのない問いに、
自分の経験で物事を語っても何も出ないというポリシーを持っている。
まずは現実の制限を取っ払った、
SFの世界からアイデアを考えて、実現可能か、需要はあるかと自問自答し
アイデアに落とし込む。
「海に浮かぶビニールハウス」海上でビニールハウスが栽培に最適な場所に移動する。
↓
↓ (バックキャスティング)
↓
「ポテンシャル名産地」陸で最適地を探す。
(3)調達力 <解決策のために必要な人>
解決策ができた時に
どんなパートナーと組むと価値を最大化できるか考え、
調達することができる。
・天地人メンバーのスカウト
・振動絶縁技術を使った新たなプロダクト開発でニーズのある企業を探して自分でアプローチ パートナー例:多摩川精機
・「ポテンシャル名産地」は世界的に単一作物を生産販売する企業にニーズがあると考えアプローチ パートナー例:ゼスプリ
(4)突破力 <解決策の実行>
何かのプロジェクトを行なっていると必ず壁に出くわす。
その時、逃げるのではなくどのようなソリューションを使えば、
それが突破できるか考え実行できる。
だから、5年を超える2個の衛星開発プロジェクトを成功に導けた。
(5)侵略力 <自分を進化させ続ける>
自分の領域以外のことに首を突っ込む好奇心・探究心・行動力がある。
DPR紹介アニメーションの制作、
振動絶縁技術を使った民間企業共同プロジェクト立ち上げ、
天地人の立ち上げなど、
一企業の一エンジニアで完結せず自分の現状に挑戦しつづけている。
以上の5つが力が、
status quoを変える百束さんを形づくっていると思う。
現状の課題を見つけることは誰にでもできる。
しかし、解決策を生み出し、実行し、
status quoを変えられる人はそうはいない。
百束さんは世の中の現状、自分の現状に挑戦し続けている人。
3年半前、衛星を作っていると初めて聞いた時もすごいと思ったけれど、
今はもっともっとすごい。
これからの百束さんがどんな道を歩むのか、
どんなことを成し遂げるのか、
「なんだかこっちまでワクワクしてくる。」
だからきっと、わたしはこの人のことを「素敵」と思うのだろう。
=== profile ===
百束 泰俊(ひゃくそく やすとし)
・ JAXA主任研究開発員としてGPM主衛星、いぶき2号衛星の全開発工程を経験。
・振動絶縁技術を開発、特許を取得し、民間企業と新たなプロダクト開発を行う。(事例:多摩川精機)
・ビジネスコンテストS-Booster2018にチーム天地人としてエントリーし、ビジネスアイデア「宇宙から見つけるポテンシャル名産地」が審査委員特別賞、ANAホールディングス賞、JAL賞をトリプル受賞。
・今年5月チーム天地人で「株式会社天地人」を設立。
・MENSA*4 会員
*1 DPR(二周波降水レーダ)紹介アニメーション
https://youtu.be/VGUddLHDVts
*2 ゲームアプリ「救え!カエル紳士」http://www.satnavi.jaxa.jp/gpmdpr_special/education/education2.html
*3 株式会社天地人
http://www.tenchijin.co.jp/
*4 MENSA:人口比上位2パーセントのIQの持ち主が入れる国際グループ