手術前最後のエコー、心の整理
掻爬手術の当日…
病院に着いたら、救急車で搬送される産婦さんとすれ違い…待ち合いにはお腹の大きな妊婦さん、運ばれる産婦さん、手術を受けるわたし…
みんな状況はちがくて、誰が幸せとか誰が不幸せとかじゃない、今ここにいる人はみんな不安を抱えているんだと思いました。それ以上は何も考えないようにしていました。
内診台で最後に赤ちゃんの確認。
大きさは8週でほんとに止まっていました。胎囊だけがやたら大きく見えて、広い部屋の隅で丸まったまま動かない、本当に小さな我が子でした。
この時不思議と、
「あぁ、この子のせいじゃないな」
「こんな小さい赤ちゃんに、腹を立ててもしょうがない」
「こんな小さな生命すら、運命の前には守ることはできないんだな」
「赤ちゃんは悪くない、誰も悪くない」
初めてそう思いました。
内診台に座って、すべての事象を自分で見て聞いて手術を受けてっていう過程で、この事実に向き合い、納得していけるのかもしれません。
「エコー写真お渡ししても良いでしょうか?」
女医さんはそう聞いてくださいました。
赤ちゃんの最後の写真。つらくて見たくない、欲しくないという人もいるのだと思います。
「いりますか?」「いらないですか?」ではなく、「お渡ししても良いでしょうか?」とわたしに最大限配慮してくださったのが、とても嬉しかった。
「はい、お願いします」
迷わずそう答えていました。
赤ちゃんのエコー写真アルバム。
1回目の妊娠のときも、今回の妊娠も、3枚くらいずつしか集まらなかったけど、それぞれ別のアルバムにしまっています。
たった3枚だけでも、わたしのお腹に赤ちゃんがいた証拠写真だから。
最後のエコー写真は、不思議とわたしの心を整理してくれました。手術をひとりで待つ間、ようやく腹立たしさが消えていきました。