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救急車を呼ばないでください

「自分で食べられなくなったら、食べさせないでください」という記事を、少し前に書きました。


「救急車を呼ばない」ことについては、食事介助をするしないより、決めやすいです。そうしている方は多くおられます。

 ケアマネの仕事をしていると、癌で緩和ケア(末期に近くがん治療をしない)を選んでおられる方、看取り期の方を担当することがあります。関係者合意で「救急車を呼ばない」選択をすることが多いです。もちろん救急車を一応呼んで欲しいと言う場合もありますが。

 救急要請をすると「延命措置をしてください」という意思表示になります。救急隊員や救急病院は、延命措置をする仕事を担っています。救急車を呼んでおいて、この人は延命措置を望んでいませんでした、延命措置を止めてくださいとは言えないのです。ICUで面会制限、経管栄養・点滴・投薬等の管に繋がれ、酸素吸入で話もできなくなるかもしれません。若くて交通事故で等今をしのげれば元気になる時は延命措置をしてもらわなければなりません。が、
 ガン末期・老衰では、検査や治療の苦痛を受けないで、穏やかに会いたい人に会い、ゆっくりと過ごしたいと思うのではないでしょうか。
 入院している以上、管や人工呼吸は断れたとしても辛い検査が繰り返されます。まだまだコロナもあり面会も制限されます。

 体調不良で通院したら、ガン末期と言われ入院となった場合、治療方法がないなら自宅やホスピスや介護施設へ移ることを算段しないと、望む形で家族と過ごせないかもしれません。私の友人(ケアマネジャーです)はガン末期のお兄さんに面会ができず、奔走してホスピスへ移し、数日後に家族で見送りました。「救急車を呼ばないで」だけでなく「入院させないで」を考える必要もあります。

 90歳を超えていた姑がショートステイで具合が悪くなり、救急搬送されたことがありました。入院しますか?1泊3万円の部屋しかありません。さすがに医師も治療とは言いません。どういうわけで入院するのですかと聞くと検査をするとのこと。断って、介護タクシーで長男宅へ(私は三男の妻)戻りました。訪問診療・訪問看護を利用していたので安心して戻れました。
看取り期でなくても、通院が難しい年齢になったらいつ何があるか分かりません。訪問診療に切り替えると良いと思います。もう、積極的な治療を本人も家族も望んでいないなら。

※ 介護タクシー 病院に頼めば呼んでもらえます。
  メーター+5000円位(迎車、車いす・ストレッチャー、介護等で変化)
  私はスマホに一人登録。都合悪くても仲間を手配してくれます。自宅から頼む場合も想定して。救急車でなく病院へ行きたいが歩けない等。あらかじめ頼んでおけば病院終わるころに迎えに来てくれます。

※ 訪問診療 タクシーで通院介助するなら払える料金です。

※ 訪問看護 介護認定を受けて負担割合1割なら、1回1000円弱で。

 
 癌の緩和ケア・看取り期の場合、訪問診療・訪問看護の医療職が自宅に来ることになります。医療職の係わりなしに自宅で亡くなると、警察の関与があります。もともと関わっている訪問診療の医師が24時間以内に死亡診断書を書いてくれることにより、警察沙汰にならず自宅で逝くことができます。

 本人・家族・介護サービス関係者全員が「救急車を呼ばない」ことになっていることを知っている必要があります。

 「救急車を呼ばない」ことを知らない人が、救急車を呼んでしまったこと
がありました。80歳台後半で独居。本人も寿命は足りているし楽しいこともやり切ったと言っており、在宅酸素5.5マックスで労作時呼吸が苦しい方。訪問診療にかかる前の時期に救急車で一度運ばれたことがあるのですが治療法はなく自宅に返されたこともありました。家の中には急変時の24時間の連絡先(訪問診療・訪問看護)が貼ってありました。
 来訪した妹さんが倒れているのを発見し(多分亡くなっておられた)救急車を呼んでしまい、死亡確認され、警察署へ運ばれてしまいました。連絡を受けたキーパーソンの娘さんがケアマネの私に電話をくれ、事情聴取に警察が来ている自宅を訪問しました。日曜日でしたが訪問診療に連絡、明日朝に死亡診断書を書いてくれることを確認。警察官には今までの訪問診療報告書を提示し呼吸苦、浮腫み顕著で病状が悪かったことを説明しました。娘さんは「張り紙があったのに救急車を呼んでしまったのね」と妹さんを責めるような言い方。「説明をしておけばよかった」と。翌朝死亡診断書ができ、すぐに警察を出て葬儀社へ運ぶことが出来ました。妹さんが発見時に訪問看護へ電話してくれていれば、警察は係わってきませんでした。

 以前に勤めていたケアマネ同僚担当の利用者様、癌末期に近く在宅生活
デイサービスの送迎員が救急車を呼んでしまいました。ヘルパーやデイの職員ならまず家族・ケアマネ・訪看等に連絡し救急車の可否を問うてきます。搬送先で胃ろうを勧められ家族は断れず入院が続きました。ガン後期の患者に胃ろうをする医師もいるのです。医師も常識あるはずと思ってはいけません。デイの送迎員は運転委託されている情報共有が無い人もいます。運が悪かったとしか言いようがありません。胃ろうはいったん造設すると普通は外せません。胃ろう管理は介護力がなければ自宅では難しくなります。医療職か家族しか注入できません。ヘルパーは手伝えません。看護師に負担がかかるので施設も受け入れ難しい場合もあります。

 普通に暮らしていた方が、例えば入浴中に亡くなると、警察署で死亡診断書が書かれるまで数日戻れません。これは御存じの方が多いかもしれません。救急車を呼ぶということは普通に暮らしていたということになります。

 ガン末期でも、看取り期でなくても「救急車を呼ぶな」と家族に言っている医師もいます。医師だから言えると思うのですが、延命治療の辛さを見ている医師だからそう言うのだと思います。「患者よ癌と闘うな」で有名な元慶応病院医師の近藤誠氏です。


副題は「平穏な死を迎えるために今からできること」
吹き出し「人生の最期で後悔する人が多すぎる」
巻末に、リビングウィル の見本が載っています。中村仁一氏の著書「大往生したけりゃ医療とかかわるな」を参考にしたとのこと

リビングウィル
いっさい延命治療をしないでください。
<中略>
・意識を失った場合、救急車を呼ばないこと
以下、10項目続きます


 自分の意思は書面にしておくと、家族も医師と話しやすいかもしれません。「胃ろうを断るなんて、親を見殺しにする気なのか?」と子供が医師に言われた時のために。



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