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日本初のバー、神谷バーは噂通りレトロでイカしてた


以前浅草でポケモンのイベントがあった時からずっと気になっていた神谷バー。その時は満員で入れなかった。平日昼間なのに何事⁉︎と思ったが、どうやら平日でも内外の観光客は勿論、地元の飲兵衛さん達から絶大なる支持を得ているらしい。

創業明治13年の老舗、その神谷バーに通い始めて10年以上になるというA夫妻に今回は席をとって頂いた。何でもA夫人のお父様が会社員時代に何度か神谷バーに来ていて「懐かしいから一緒に行こうよ」と誘われたのがA夫人の神谷バーデビューのきっかけと伺った。以来ご夫妻にとっても大切な場所になったとのこと。
父と娘の思い出の場所が娘夫婦へと受け継がれ、私と夫もその場所に誘って頂けた事がとても嬉しい。


土曜日の昼間、既に人が溢れている一階入り口を横目で見ながら2階へと階段を上がる。

2階入り口。
神谷バーのショーウィンドウは食品サンプルまで
レトロだった。

店内に入るとAさんご夫妻は既に着席していた。
挨拶もそこそこにさっそく各々の飲み物と鳥の唐揚げ、カマンベールチーズフライを注文する。
男性陣は名物デンキブラン。私はカクテル。お酒の飲めないA夫人はアイスコーヒーでまず乾杯だ。

鳥の唐揚げとカマンベールチーズフライ

手前左の小さなグラスに注がれた、ちょっと見養命酒の琥珀色の液体が噂のデンキブランだ。
このカクテルベースのブランデーは、ジン、ワイン、キュラソー、薬草などが秘伝の配合でブレンドされているそうでほの甘くとても飲みやすい。がアルコール度30度なのでくれぐれも飲み過注意だ。
しかし、熱々の唐揚げとカマンベールチーズのフライを摘んでいた夫とA氏はすでに2杯目のお代わりを頼んでいる。
危険だ。非常に危険だ。
これは私とA夫人で監視するしかない。

改めて店内を見渡すと、バーカウンターといい、天井の照明といい、これぞレトロモダン。

私たちが陣取った2階の店内も11時半の時点でほぼ満席である。客層はカップル、女子会、夫婦風、外国人の団体など統一感は全くない。が、皆それぞれ周りを気にせず好きなものを食べ、好きなものを飲み、大いに語り合っている。
大人カッコいい店内でありながら、新橋の屋台風味も漂う不思議な空間だ。
そして抜群に居心地が良い。

で次なる料理は

タコのマリネとジャーマンポテト

この辺りから男性陣の飲むピッチが明らかに速い。徐々にアルコールに脳が侵され多幸感に包まれる夫とA氏を横目に、私とA夫人はひたすら食べ続ける。
A氏とは夫の以前の職場以来の付き合いで、夫が退職後も夫婦共々仲良くして頂いている。
お二人はアメリカ暮らしが長かったのだが、常に
気配りを欠かさない素敵なご夫婦だ。
帰国する時、愛猫を一緒に連れて帰るほど大の猫好きで、野良猫3匹と暮らす私達とは猫話になると話が止まらない。
「猫は何をしても許される。何故なら猫だから」
両家の家訓である。
本日も互いの近況報告から始まり、猫ちゃん話、好きな車種、飛行機、理想の列車旅行など各々熱弁を奮っている時だった。
好きな弁当選手権で常に上位にランキングされるみんな大好きシウマイ弁当のおかずの中で何が1番好きか?の話になった時、A氏は唐揚げ、私とA夫人はシウマイ、夫は筍煮をそれぞれ選んだ。
「え?筍煮? 1番いらな〜い」
A夫人の一言に椅子から転げ落ちそうになる夫。
シウマイ弁当の筍煮を愛してやまない夫にとってこの一言は青天の霹靂、まさに驚愕の一言だったのだ。


夫「何で?何で?何で? 絶対必要でしょ!
筍煮摘みながらビール呑むまでがワンセットでしょ!」
A夫人「私、ビール飲まないですもん」
夫「飲まなくても美味しいでしょ」
A夫人「でもいらない」
夫「なら今度、筍煮は僕に下さい」
A夫人「あげる、あげる、全部あげます」
A氏「駄目駄目駄目!!!筍煮は俺が貰う!!!」
筍煮一つでこんなにムキになる大人達も珍しい。この会話を崎陽軒の社長に是非お聞かせしたい。

この時点でA氏の顔色は相当赤い。
夫も顔にこそ出ていないが、だいぶ怪しい。
目の前にない筍煮を取り合うぐらいだから、2人とも相当出来上がっている。

取り敢えず不毛な筍煮の取り合いは一旦無視して、更なる追加注文をする。

メンチカツ
串揚げ

見ての通り美味しい茶色祭りだ。
と、ここに来てさっきまで筍煮で揉めていた男性陣がいつの間にかまたデンキブランを追加している。絶対飲み過ぎだよ!
これは炭水化物をお腹に詰め込んで、アルコールの吸収を遅らせるしかない。
で女性陣がとった作戦が

シーフードドリア
昔懐かしナポリタン

必殺炭水化物攻撃だ。

うんまい!

男性陣に食べさせるはずが、いつの間にか私とA夫人の胃袋に収まってしまった。こりゃいかんと慌ててチーズ🧀の盛り合わせなど追加する。
もう既に、何をどれだけ食べたかも分からないほどの追加祭りだ。
その時、私の携帯にLINEが来た。
娘からだ。
何事だろう?
「今、レイドでネクロズマ100取ったよ❣️」
ちなみにこの娘は以前noteにあげたワイルドエリア福岡スタッズカビゴン100💯の娘である。


しまった!
今日は14時からポケモンgo のネクロズマのレイドデーだった。携帯をポケモンの画面に切り替えるとリアルタイムで現在レイドに参加中のプレイヤーの数が表示される。今まさに皆さんレイド真っ最中だ。
しかも、この席から届くジムが4ヶ所もある!
(ポケモンgo やっていない方には何のこっちゃ?だと思います。謹んでお詫び申し上げます)

隣ではA氏と夫が、もし搭乗した飛行機の機長と副機長が2人とも操縦困難になった場合どうするか?で白熱の議論を繰り広げている。

私はA夫人に目配せした。
「今、ネクロズマのレイドやってるよ」
実はA夫人とはポケフレンドでもあるのだ。
「やりましょう!」
確か本日のネクロズマのレイドは17時までだ。
早速2人で参戦する。無料パスがあるのでやらなきゃ損だ。女はいつでも損する事が嫌いなのだ。

「色違い出ました!」
A夫人の歓喜の笑顔が眩しい。
う、羨ましい。あわよくば色違い100が欲しい。
女の欲望は果てしない。
右手にフォーク、左手に携帯と二刀流しつつ、今A夫妻が夫婦ではまっているというスナネコの話を聞く。この砂漠の天使がいかに愛らしいかを熱弁するA夫人に相槌を打ちつつ、ネクロズマゲットだぜ!
大谷選手も顔負けの三刀流だ。(違います)
隣はというと、今度はどっちが機長になるかで不毛な議論を繰り広げている。
もはや意味不明な男性陣は放っておいて、「やっぱり甘いものは別腹だよね」という全女子必殺の決め文句でラストスパート、スイーツを注文だ。

チョコバナナパフェとフルーツパフェ

飲んで食べてお喋りしてポケモンしてパフェ食べて、大満足の女性陣が食後のコーヒーを優雅に飲み終える頃、男性陣の議論もひと段落ついたらしい。

「最後にもういっぱいだけブラン飲む?」
頷きかける夫。
A氏の提案をA夫人が全力の目力で制止する。
「最後にもういっぱいだけブラン飲む?」
「最後に、」
「帰りますよ!」
夫人はこのまま同じ言葉を永遠に繰り返しそうなA氏に退席を命じた。
「・・はい」
ふと時計を見ると17時を過ぎていた。

え? 私達、6時間もいたの!?
これが本日1番の驚愕だった。

ま、沢山注文したし。売上に貢献したし。
そそくさと会計を済ませ神谷バーを後にする。
辺りはすっかり黄昏れて色とりどりのネオンが灯る中、4人で駅に向かう。
途中、インドから来たと思われる御一行とすれ違う。その中の1人が雷門通りを歩きながら片言の日本語で隣の連れに話しかけるのが聞こえた。
「レトロだなあ」


夫婦2組で浅草駅から銀座線に乗る。
始発なので4人並んで座れるのが有難い。
車内はお土産と思われる大きな紙袋を持った外国人でいっぱいだ。異国の人にとっても浅草はミステリアスで魅力的な街なのだろう。
いつかまた浅草を訪れる事があったなら、レトロでイカした神谷バーで電気ブランを飲んで欲しい。


A夫妻の乗り換えの駅が近づく。
「今度はシウマイ弁当とチキンを持ち寄って集まりましょう」
正月明けの再会を笑顔で約束する。
「だいぶ早いけど、良いお年を!」

新年早々の筍煮争奪戦が今から楽しみだ。

追記

電気ブランの由来
「電気」は当時文明開花の先端で、モダンで珍しいものでした。その頃珍しいものを電気○○と呼ぶ風潮があり、かつビリビリッとする飲み口から
電気のブランデー、デンキブランと名付けられたということです。


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