マガジンのカバー画像

出産と育児のこと

20
子育てについて、フリーランス目線で綴るマガジン
運営しているクリエイター

#小説

ハッピーでもバッドでもない人生を、ささやかな思い出と生きていく

昔、深夜にどうしようもなく悲しいことがあり、男友だちを呼び出してドライブに連れて行ってもらったことがある。 彼は泣いたり怒ったりする私の話をずっと聞いてくれたあと「俺、町を出ようと思ってるけど、一緒に行くか?」と言った。いつ?と聞くと、今。と言う。きっと何か事情があったのだろう。好きでもない女を連れて行きたいほどの孤独を考えるとノリで行ってあげたい衝動に駆られたが、結局なんとなく断った。20年前の話だ。 そんなたわいもない記憶を思い出したのは、短編小説『夜空に泳ぐチョコレ

言葉の切れ味

これは小説『昨日のカレー、明日のパン』に出てきたセリフ。 このセリフを見て改めて思う。「言葉」を扱う仕事をやってきて、私は呪いを解く言葉をひとつでも他者に提供できたことがあるだろうかと。 同時に、妊娠出産において、たくさんの人からもらったお守りみたいな言葉の数々を思い出した。 呪いを解く言葉いちばん心に残っているのは、編集で携わっているメディアの編集長からいただいた言葉だ。 グループチャット内で出産報告をした際にもらった言葉なのだけど、そのときの私にとってドンピシャで