仮想:東京の歴史(試験公開)

1.
無地のタイルがある
それが辺と辺を貼り合わせ、底に図柄をあらわす
底というのは水底でも地底でも構わない
ただそれ以上下に行くのに骨が折れる所を我々は「底」と仮称する

もっと底を見たくないか?

地殻変動を待つ必要はない。
ただ掘れば良い。
地面を
私は去年√5iセンチ掘った。骨の折れる仕事だった。

土を集めたかった。

土を集めて粘土を作り、焼き固めてタイルを作ろうと思った。固めたら、掘った分だけ低くなった地面を埋めるのだ。徒労である。

必要のないビジネス。
それを代行するためのビジネス。
ビジネスのためのビジネスが折り重なっていく。
ビジネスのベルトコンベアに乗せられて底はどんどん降りて行く。
土でなくなったものが土を隠す。
路上生活者が寝っ転がり、僕らが踏みしめる地面は、山積みの加工品たちの屍の上にある。

この不自然を疑ってみる。
それも徒労である。
だったら底を探してみるかい?
狭くて暗くて、光の届かない場所
息をしたくば、最後は埋め立てて、積み上げるしかないのだ。
可哀想に。

あるいはもっと掘ってみようか。
君の手で、底を更新するのだ。
下はまだまだあるのだから。

まだまだ

まだまだ

まだまだ

そこ、

そこです

そこだったらもう

タイルが崩れたら

生き埋め確定(笑)


あ、

地震




2.
霧を見ている。
霧の向こうではない。

月を見ている。
太陽光の反射ではない。

これらは嘘だ。

ほらあなに吹き込んだ嘘の機械的な反響は
君に同調しない

君に同意を求めている

「だって人は、見たいものしか見ないから」

訳知り顔でそういうことをいう人がいる。
しかもどうやら、それは君のことらしい。

しかし、僕はそんな偏見を持たない。

鑑賞の機能は、偏見の統合。
偏見と偏見の緩衝地帯、
最適化された視座の分解、

そういう仮説。

仮説は偏見ではないため、検証を要する。

検証を始めよう。
寝返りを打って彼のベッドと彼のベッドの隙間に落ちてしまわないように。

気兼ねなく、君が夢を見ることができるように。

おはよう、目は閉じたかい?

思い出すことは諦められたかい?

目に浮かぶまで待ってるんだ
人間はどこまでも受動的だ

「来た」

そう思ったら取り逃がさないように
実行を重ねる。

実行は手段である。

思索のための生存に、実行は欠かせない

実行のための生存に、欠かせないものはない
宝くじでも当てればいい
それか
自殺。

ほら、

もう目が醒めるよ




3.
絵のうえを飛びこえて
孵化する滝
落雷は静かな鳥瞰図

ラクシュミーの不潔な刀痕
アルテミスのくびきは
慈光の隠し通路

未明の靴の法則

ランプシェードに置き去った旅籠

亀を照らす傍線

キッチュへ昇る壁
秘色の預かる庭

二つの沖、沖の参列
不如帰の帰還
列ニッケル、列オーブン、列ノズル
オシロスコープの恫喝
脱音症

直列史観
耐熱バンクラプトの煮汁
ラミング航行

六乗された被写体
螺髪・買取り・オムニバス・電極。

不当逮捕の上映、

人道的ひらがなパズル、

歯肉と牙の蜜月、

味噌汁に添えられた血清
やぐらの顕証
暴れヶ丘の暴れ数列と交配した偽プラズマイオン
偽アクリルジュース+アクリルプリン

シロフォンの産声
先天的落丁

破綻したプロジェクションマッピング

放射する展示通路。
調光するハツカネズミ、

国営遮光器土偶転売局局長、青井戸鴨子。

彼女は連日、多臓器不全の八宝菜を痛めつけている

クラインの壷と同相の球体

二度寝より茶色を憂いている

外連味の詰まった点滴
雑居ビルの十三階段
ロケット鉛筆の兄弟愛
体温を感じる

増五度の交番

コレットの愛用レジン

菜種油のスペースシャトル

清潔な
臨界面の
肥沃な化粧ポーチ

その突発的な
蒸発

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