次に会う約束をしよう、それだけで嬉しい
大学生の頃、なんとなく流行っていた色んなバンドのCDをTSUTAYAで5枚1080円でレンタルして、ウォークマンに落として聴いていた。
その中の一つにクリープハイプがあった。
クリープハイプのボーカルは尾崎世界観で、高い声が特徴的だ。他のメンバーのことはよく知らない。それから、尾崎世界観がどんな人物なのかも知らない。
知らないままでいい。
熱しやすく冷めやすい私は、過去アイドルやバンドにハマり、そしてあっという間に飽きがきて、好きという感情ごと消えてしまった。
すごく悲しい、という実感はある。あんなに好きだったのに、と。だけど自分でもどうして急に興味がなくなってしまうのかが分からない。
クリープハイプに対してもそうなってしまうのが怖い。このバンドに出会えたことはなんとなく大事にしたいと思ったからこそ、深く関わらないことにした。
社会人になってからも、曲だけを聴く日々。いつも救われています。
音楽を聴く媒体は、いつの間にかウォークマンからサブスクに変わっていた。
相変わらずCDは持っていないし、YouTubeなんかで関連動画も見ないし、もちろんライブにも行かない。
そんなある日、突然流行り始めた謎のウイルス。
インフルエンザのような季節型かと思いきや、どうやら長引きそうだ。
仕事は出勤日数を減らされ、友達とも家族とも会えず、彼氏とも別れた。
思うように外出できない日々が続く。おかしくなりそうだった。
それでも、クリープハイプは変わらず当たり前に側にいてくれた。
気づいたら、私はクリープハイプしか聴いてなかった。
2021年4月、意を決してライブに行った。
初めてのライブは尾崎世界観の日という、尾崎世界観の弾き語りライブだった。
今まで頑なに行かなかったライブになぜこのタイミングで行こうと思ったか、それは一生に一度はこの目でちゃんと見ておきたいと思ったから。
日常の当たり前は、いつまでも普通にあるとは限らない。
それはあの、謎のウィルスが教えてくれた。
好きなバンドがいつまでいてくれるかも、私が明日生きているかどうかも、何も保証されていない。
そんな世の中を生きているということを改めて実感した。
渦中の制限が多い中、じっくりと声に耳を傾けるライブは全てが最高だった。
ぬるっとステージ上に登場した尾崎世界観が、一瞬でその会場を支配し、緊張感が一気に高まる中、ギターと歌声だけが響く。
MCでは、歌っていない彼から覗くごく人間らしい部分に惹かれた。頭を掻く仕草だったり、笑い方だったり、とても愛らしい人だった。
そして彼は「また、普通に会いましょう。」と言って、次の約束をくれた。
約束通り、クリープハイプのライブにも行った。
その後も、約束は定期的に更新され、今日の今日までずっと続いている。
今週末はアリーナツアー大阪城ホールへぶっ飛ばすんだ!
4人とも誰一人として欠けることなく、ずっと元気で生きていてください。
約束が続く限り、クリープハイプに会いに行きます。
熱しやすく冷めやすい私は、当分現れない気がする。
おわり
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