【今日のおやつ:ドーナツ】ミスタードーナツと母と私
はじめて、揚げてみた。
ドーナツ。
正確にいうと、初めてではない。
小学生の頃、母と一緒に作ったことを鮮明に覚えている。
今日は、はじめての、1人でのチャレンジだ。
ドーナツをどうやってくり抜こう?
早速つまづいたとき、
「コップと、ペットボトルのフタを使えばいいよ」
そう教えてくれたのは、記憶の中の母だった。
いけない、誤解を招くような表現だったけど、母は今も元気に生きています。
私の中で、ドーナツといえば、お母さんだ。
母は大学時代、ミスタードーナツでアルバイトをしていた。
実家に住んでいたとき、アルバイト時代の話をよく聞いた。
内容まで覚えていないから、子どもの私はあまり興味がなかったのだろう。
でも、忘れようと思っても忘れられないことがある。
母の、クセの強い発音である。
母は、ミスタードーナツのことを、「ドーナツ」と呼んでいた。
発音は、あのお馴染みの、「ピーマン」と同じ音ではない。
高速道路の、「高速」と同じフラットな発音で、「ドーナツ」と発する。
なんだか小慣れた感じだ。
そして大クセである。
母からしか聞いたことのない「ドーナツ」。
母が「ドーナツ」と話すときに指しているのは、全国各地のミスタードーナツのことではなく、はたまた、家で手作りしたドーナツのことでもない。
母がかつて働いていた、たったひとつのミスタードーナツのお店のことであり、一緒に働いていた仲間のことを指していた。
チーム名みたいだった。
「ドーナツ」のことを話してる母は、たいてい話に夢中だった。
私の知らない世界があった。
私の前で話をしているのは、学生時代の母だった。
母が「ドーナツ」好きだったからだろうか。
小さい頃のミスタードーナツ・メモリーズが、今もいくつも記憶に残っている。
・家族で焼き鳥屋さんに行った後、向かいのスーパーに隣接しているミスタードーナツに行ったこと。
・私はそこで、ドーナツと一緒に、牛乳を頼んだこと。
・牛乳に入っている氷がクリーム色なのが不思議で、わくわくしたこと。
牛乳はとっても美味しかった。
家でも真似をして、牛乳に氷を入れた。
・小さなドーナツが6つ入った「ディーポップ」が大好きだったこと。
・ふたりの妹も「ディーポップ」が大好きだったこと。
3人で一箱を分けると、1人2玉食べることができる。
中に生クリームが入ったドーナツが人気だった。
見た目が地味なドーナツが残った。
・毎年何かの時期に、何かを集めるともらえる、ミスタードーナツのキャラクターが描かれたお弁当箱を、必ずゲットしていたこと。
・家のキッチンの戸棚には、ミスタードーナツのお弁当箱が、溢れるほど集まっていたこと。
てゆうか溢れていたこと。
ドーナツは、母だけじゃなくて、私の人生にも深く関わっているようだ。
調べてみたら、ディーポップは今は無くなってるらしい。
無くなっていて、よかったかもしれない。
今ここにディーポップがあったら、私はひとりで6つ、食べてしまえるから。
どれを食べるか悩むことも、妹たちと取り合うことも、母にごちそうさまを言うことも、できないのだから。
次に実家に帰るときは、ミスタードーナツを買って帰ろうと決意した、今日のおやつタイムなのであった。
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