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ツミな鰻さま

念願が叶う時。

こちらを口にするのは 10年以上前になるやも知れぬ。
その時は 両親が 私を連れて専門のお店で食べさせてくれた。

そしてこの瞬間を迎える。

おお!鰻様。
こうしてお会いできるとは。
味わっておなかに納めさせていただきます!

前の日、
YouTuberのオシャレさん女子がポップアップで出店するとの情報を知り、
その会場となる百貨店へ出向く事にした。
ここのところは 愛犬と近所のお散歩に幸せを感じる生活だったから、百貨店に向かう事は躊躇われ、とても億劫にも思ったが。

「何かごちそうを食べるか」

の思いつきにすっかり行く気になった。

「何をたべよう?」

色々と美味しいものが、その時の思い出とともに頭に浮かんだが。
やはり、ひとりで「美味しいものを食べる」という後ろめたい決断をするのだからその価値に匹敵するものでないといけない。

「アレだな。」

養殖はスーパーでお目にかかるのに、
天然はなかなかお目にかからない。
しかし、ある所にはあり。お高いお値段を支払えば食べられる…。

まるで、ナゾナゾのようだ。

私は少々お高い値段を支払う覚悟して
そのナゾナゾの答えとなる
「鰻」
を食べよう。と決断した。

大丈夫。 
思わぬ高価な値段に遭遇したとしても 怯まず堂々とお店で食せるように百貨店の商品券5枚を備えておくようにしよう!

そして本日
電車に乗り込んで人の沢山往来するアーケードを足速にくぐり百貨店へ入店した。

華やかな商品が美しくならび、よい香りがする百貨店の中だが、そこに居るお客さんの様子もさまざまだ。


エスカレーターに乗っかって3階、ポップアップのお店に行ってみた。
並ぶ商品はYouTuberのオシャレさんの彼女のイメージ通り。
フリルや小花のかわいい世界をお洋服にデザインする。


素敵だった。

こんなシースルーの細身の洋服を彼女は着用しているんだなあ。

ときめきを放つ彼女の世界を見れて嬉しかった。

心の中で、彼女に

「お店をたずねましたよ!」

と話しかけてあっさりお店を出た。


向かうはエレベーター!

何と言っても今日の私を動かす原動力となる目標にむかわなければいけない。

12階にレストランがあるようだ。

百貨店のエレベーターは8機ほどもあって音も立てず上品に動いている。

エレベーターはお手のもの。
ささっと乗り込んだ。

12階に降りて、通路を進む。

左手に中国料理店、右手に鰻店。

迷いは時間の無駄だ!

「ひとりです。」
とお店の人に伝えて、席に案内してもらった。

お品書に目を通して 
鰻の 「竹」を注文した。

しばらくして「鰻」が私のテーブルへ運ばれてきた。

では、「いただきます!」
念願が叶う時。

ふわりとしたその身の柔らかさ。
口の中でその身が意外にあっさり広がってタレのついた甘辛いご飯と口の中で混ざってとても美味しい!

奈良漬が 箸休めに付くんだった。
お酒の香りが高級感を増しますね。

お店の中には ひとりの私 と 韓国語を話す赤ちゃん連れの家族。

私が何を思って鰻を食べているのかは
気づかれまい。

こうして鰻を久しぶりに食べた事を覚えておこう。

お店で鰻を食べたのだから。

後ろめたい気持ちを持つ事も心地よい。
これくらいの事はみんなあるはずだから。



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