妊娠する夢
妊娠したあの感覚が忘れられなかった。
まだ妊娠したことのなかった当時の私は、夢の中で妊娠をした。
胎児がお腹の中で生命を育む感覚。
胎児の鼓動を感じて、幸せに満ちた感謝の気持ち。
徐々に身体が重たくなり、気持ちが不安定になりながらも、産まれてくる喜びに溢れた幸せな気持ちだった。
目が覚めた瞬間、お腹を抱えていた私は、しばらく自分が妊娠していると思っていた。
徐々に現実に引き戻されて、夢だったのだとわかった。
「お腹の子は?」
どこへ行ってしまったのだろうと、とてつもない悲しみが襲って来た。
確かにここにいたのに、理解出来ない!と思った。
現実の世界の私のお腹はぺちゃんこで膨らんではいなかった。
涙がこぼれた。
いっそ夢から目覚めたくなかった。
それから徐々に視界がハッキリとして来て、夢だったのだと理解出来るようになった。
その後、この感覚は出来るだけ鮮明に、忘れないで覚えていたい!と思った。
妊娠したことのなかった私が、妊娠を一晩で経験出来たのだから、こんな経験はなかなか出来ないだろうと思ったのだ。
いつか本当に妊娠する時まで、正夢になるように、大切に私の中にしまっておこうと思った。
いつか同じ経験が出来る日が来ると信じようと思った。
それからしばらくして、私のお腹の中には新しい命が誕生してくれたのでした。
夢にまでみた妊娠出産は現実となり、初産なのに二度出産したような珍しい経験をさせていただきました。