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satoshi_st
居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜 P7
1.黒田 誠 オープン記念キャンペーン⑥
「えっと…『マウンテン号』はこっちで…2号車は…」
トレイを片手で支えながら切符を確認しつつ彼女はプラットフォームを移動する。
「あ、有った! こっちよ」
俺は彼女の後に続いて列車に乗り込んだ。
うん…どっからどう見ても特急列車の車内だ。
狭い通路を縫うように移動しなんとか席までたどり着く。
「あ、ここだね。奥だから先に座って」
彼女に促されるまま俺は奥の席へ向かう。
…なるほど、確かに変な席だ。
確保した席は窓と窓の間の席だった。
つまり窓際なのに窓ではなく壁になっていて上着とかバッグとかがかけられるようになっている。
故に外がほとんど見えない。
まぁ、別に景色を愛でるつもりは無いから気にしなくても良いと言えば良いのだか、気分は幾分削がれる。
とりあえずトレイを仮のつもりで座席に置き、せっかく有るから荷物掛けにカバンをかけようとしたら…
「カバンは財布だけだして網棚に置いたら?」
と、彼女に提案された。
ハイハイ…先達の意見には従いましょう…。
俺は言われた通り財布を出してカバンを網棚に乗せた。
ついでに彼女のバッグも網棚に乗せる。
「ありがとう」
素直な感謝の言葉に何だかくすぐったい気分になった。
俺は前の座席の網になっているポケットに財布を入れ座席に置いておいたトレイを退かせて座る。
財布を入れたポケットにはメニューらしき物が入っていた。
「恐れ入ります。切符を拝見致します」
わぁお!
車掌さん(姿の店員さん)まで回ってきた。
俺は上着のポケットにしまった切符を取り出して車掌さんへ渡す。
「ありがとうございました」
座席の番号を確認してもらい切符を返される。
細かい演出だなあ…。
居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜 1.黒田 誠 オープン記念キャンペーン⑦
へ続く