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居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜 P75
5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑯
「さて、腹も膨れたし踊ってくるか」
黒田さんが財布を背広の内ポケットに入れながら立ち上がる。
え? 踊る?
ここはクラブか?
「良いねぇ。私も行こう」
野崎課長も笑いながら立ち上がった。
「踊るアホゥに見るアホゥ」
「同じアホなら踊らにゃ損ソン」
楽しそうに二人は席を外す。
私は慌てて追いかけて(もちろん財布は持っている)
「すみません。『踊る』って何ですか?」
と、訊ねた。
「盆踊りだよ。あそこで踊っているだろ」
黒田さんがホームの中程で踊っている人達を指さす。
確かに浴衣姿の店員さんに混じっていろんな服装の人が踊っている。
「踊りの振りを知っているんですか?」
「イヤ、全く知らない」
"ガクン"
私は思わずズッコケた。
「知らないのに踊るんですか?」
いつの間にか側にやってきたジャンが問いかける。
「そうだよ。そんな難しい振りじゃないし…」
「見よう見真似で踊れるよ」
いつのまにかホームに降りた私達はしっかり踊るメンバーになっていた。
野崎課長が踊っていた店員さんと店員さんの間に入る。
店員さんはイヤな素振りすら全く見せず、場所をさりげなく空けてくれた。
私も踊りの輪に入ってみよう。
…なるほど……
踊りの振りは確かに単純なので直ぐに踊れるようになった。
ふふふ…
楽しいなぁ……
居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜
5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑰ に続く
https://note.com/yumeoka_ayako/n/n54004062c529