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居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜 P56
4.関口 真奈美 センチメンタルジャーニー⑤
私は少し急ぎ足で廊下を進んでいく。
本当はみゃあ先輩に合わせてあげたいが如何せん時間が時間だ。
つまり…閉店まで1時間を切っている。ラストオーダーまで何分残っているのやら……
焦る!
焦る!
すぐに客席入口の【なんちゃって改札】が見えてきた。
「…?…やっぱり駅?」
「違います!」
そう言いながらも乗車券を改札にかざして中へと進む。
「入り方は駅と同じですよ。閉店が近いから急いでください」
私は必死に先輩を急かせてトレイと飲み物を選んだ。
もう、先輩の意見等聞いている余裕はない。
お通しなんかほとんど残ってないから選びようもない。
スピードが命! とばかりにアイス烏龍茶をグラスに注ぎ余り物のお通しをジョイントさせる。
ふと、近くにある【サジタリウス駅名物 山葵海苔巻き】が目に入った。
受注販売は止めたのかな?
見本かな?
ラストオーダー時間が迫っている為なのかな?
よくわからないがサジタリウス駅に到着する時間ではないのに少数だが売り出されている。
でもこれは買わなければ!
手早く購入し改めて乗車券の席を確認する。
席は『マウンテン号 12番 A席』だった。
端だし出入り口付近だしこの時間なら悪くない。
みゃあ先輩は…と様子を伺えば、目を白黒させながらも何とか私と全く同じ料理を抱え、烏龍茶をセットしている。
よし!
「先輩、入口はこっちです。ついて来て下さいね」
視界の端で頷いたのを確認し、なんちゃって先頭車両の方へ歩きだす。
急がないと閉店時間になってしまうのだ。
何とか席にたどり着き、椅子のリクライニングを調節し腰を降ろせた時、私は心底ホッと息をついた。
「列車居酒屋へようこそ! みゃあ先輩」
居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜
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