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居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜 P58
4.関口 真奈美 センチメンタルジャーニー⑦
山葵の辛味は緑茶で緩和できるらしいと聞いた事があるので温かい緑茶も注文する。
この時間だとワゴンでいろいろ運んで来る料理を選ぶのではなく、注文された分だけを準備して持ってきてくれる方式との事。
客車入口付近に電話が設置されているので、そこから注文するのだ。
(全部メニューに書いてあった)
注文し終え、ひと休みしていた時、唐突にみゃあ先輩が首を傾げた。
「何かピンクぽい光がチラチラするんだけど気のせい?」
確かに小さなピンクぽい光が視界を時折横切って行く。
ヤバい……
飲み過ぎて幻覚でも見え始めたか?
でも、二人共見えているんだから幻覚じゃあない…
と、思う……。
私が真剣に悩んでいた時、注文した料理や飲み物がワゴンで運ばれてきた。
よしっ! 店員さんに聞いてみよう!
「あの…なんかピンクぽい光が見えるんですけど……」
内心『え? そんな光ありませんけど』って言われたらどうしようとドキドキしながら尋ねる。
「あぁ…【桜の花びら】です。今、日本のどこかで桜が咲いているので…。日本の何処かで桜が開花している間は桜の花びらの照明になります」
おお! 何という粋な計らい!
私は感動しつつ運ばれてきた料理やら飲み物やらを受け取った。
「スゴいね!」
「花見酒だね」
正確にはお酒を飲んでいる訳ではないから『花見酒』じゃないけど…
雰囲気! 雰囲気!
ヤケに後を引く山葵の海苔巻きを食べては
「ひぃ〜…辛ぁい。染みるぅ〜」
と、悲鳴をあげてはお茶を飲み
「口直し…口直し…」
と、お通しの豆腐のピーナッツ餡かけを食べる。
そしてまた山葵の海苔巻きを食べ……
無限ループで食べた続けた結果、海苔巻きもお通しもあっと言う間に全て我々の胃袋に収まった。
はぁ……
満足…満足……
居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜
4.関口 真奈美 センチメンタルジャーニー⑧ へ続く。