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meiji652
居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜 P64
5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑤
プラットフォームを覆っている屋根からは紅い紙製のランプ(?)が幾つも下がっている。
おそらく【チョウチン】と呼ばれている日本のランプだと思う。
そして目を凝らして良く見れば中央で太鼓を囲んで踊っている人々は映像だ。
「まずはトレイとグラスをもらいましょう」
黒田さんが声をかけてくれたので促さられるままトレイが積んである一角へと進む。
「へぇ…雰囲気有るねぇ」
野崎課長か感極まったように呟いた。
「懐かしい感じですね。子供の頃を思い出します」
先行している二人に置いていかれないようにしながらも通常とは違った光景に辺りを見回した。
「これが日本の祭り…?…?…」
隣りでジャンが目を瞬いている。
「ジャンもロベルトも行った事ないの? 地域のお祭り?」
ジャンも私も無言で何度も頷いた。
世界的な広域感染症の関係でそういった催しは軒並み中止で、有ったとしても何処で開催しているかという情報もどうやってもらえるのかがわからない。
たとえ情報をもらったとしても開催している時間には帰れなかったりしていたのだ。
「初・盆踊り祭り体験だね。楽しんでもらえたら嬉しいよ」
そう言って黒田さんはトレイを渡してくれた。
『本日は夏祭り仕様の為、飲み物のワゴン販売はございません。ビンやピッチャーを席までお持ち下さい。また、各種通常料理もワゴンでは販売致しません。各駅の数量限定名物料理を含め、屋台で祭り料理を販売しています。屋台からご購入下さい。』
トレイを受け取る場所ではそんな案内の音声が流れている。
居酒屋繁盛異聞 旅が好き〜列車居酒屋〜
5.ロベルト・シュンク ヤーパン紀行⑥ へ続く