『スターゲイザー』(凋叶棕)の考察 ~実現のための試行錯誤~(ネタバレ)
『be your shield』 で、愚直に修練をしてきました。そして『スターゲイザー』では実現のための試行錯誤を取り扱っています。ビジネス系の用語を取り扱うならリーンスタートアップにおけるプロダクトマーケットフィット(以下PMF)に向けての努力。何か着想があっても、その元客がついてくれないと売れません。売れないとやはりモチベーションも保てません。一方で、自分の生活を担えるだけ売ることができれば、新しい着想で食べていくこともできます。
リーンスタートアップとは何かというと、ミニマムバリアーブルプロダクト(MVP)という、商品の価値を必要最小限の試作で十分提示できるものを作り、顧客候補に見せ、その反応を見てフィードバックしていくプロセスです。そして、プロダクトと、マーケットがフィットした状態がPMFです。そして、実際にこの形で売れるという状態に至ったのが確認できたらさらに商売を大きくしていくというサイクルです。
しかし、リーンスタートアップのみならず、新しくものを作る時、顧客と商品候補はなかなか合致しません。その情景を歌った曲ではないかと思います。
背景概説
東方Projectは自らの作品の設定や音楽をもとに一定のガイドラインのもと自由に二次創作することを推奨しています。
登場人物は霧雨魔理沙というキャラクターです。努力家だけど、まだまだ自分の未熟さを感じている魔法研究家という設定でお聞きください。
歌詞分析
『ロストドリームジェネレーションズ』で小さな幻想を抱いて歩みだした。しかし、世の中に受け入れられるには遠そうに見える。そう。まさに空の広さのように。
ある意味小さな幻想から始まったものはどんな方向にもなりそうな気がする。無限に拡散しているように見える。だが、その広さは夢=到達可能性が、到達不可能なもののように見える。
夢を夢として遠くみていたほうがきれいだった。実際に実現しようとしていくと、あまりに人々に受け入れられるには遠そう。その遠さを感じられる。
そう、『ロストドリームジェネレーションズ』の、
そうして得た「幻想」でさえも、
きっとぼくらは。
いつか暴かずにはいられないんだ。
にて、暴くという過程が実現していく過程。けども暴いてみると、遠さを感じる。夢のままでいたほうが良かったんじゃないかと。
あまりの実現の遠さ、人々に広く受け入れられるまでの遠さに、気持ちをどう整理していいのかわからなくなる。
実際、小さな幻想の始まりは、児戯に親しいもの。だけど、それはまごうなき憧れの夢。
だけども、やっているうちに本当にこれでいいのだろうか、やっぱり児戯なんじゃないかと思えてくる。これで本当に人々に受け入れられるのだろうかと思えてくる。本当に児戯なのか、実現し得るものなのかはわからない。その感情に整理もつけることができない。
道は遠い、実現できるかどうかわからない。世の中に受け入れられる気がしない。やめたほうがいいんじゃないかと思えてくる。
籠の中の鳥はサラリーマンじゃないかと思います。籠に閉じ込められた鳥だけど、恐ろしい外部の存在から守ってくれ、餌を与えてくれます。
小さな幻想を探し歩む道には誰か手本になった人間がいたのでしょう。それがこの「あなた」。一組は『ロストドリームジェネレーションズ』の「20世紀のノアの箱舟」の乗組員ことアポロ計画のメンバーたち。もうひとり、「あなた」に相当する人間で幻想郷の住人は「徒」の別の曲の中にいます。その曲の段階でお話しましょう。
様々な困難は襲いかかる。それに戦って解決していく。だけど、自分自身の能力不足でどこまで満足な戦いができたのかわからない。
そして、そのような困難に対して、どうやって気持ちを整理したらいいのかわからない。
MVPが完成して世に示した。だけども、最初の着想はなにか問題があったんでしょう。世の中に受け入れられないのがわかってしまった。それが突然のかつての夢の終焉。「かつて」と過去形になってるのは、曲の最後では何らかの修正を加えて再び歩みだしたから。
新しいものを作り、世の中に受け入れらるのにのに修正なしというのはまずありえないと思います。だから修正をして次のMVPを作る。リーンスタートアップではピボットという過程です。
最終的には客が求めていたものと結びついていないとならないけど、しばしば作り手は無視してしまう。あるいは思い違いをする。求めていたものがわかっていなかった。
それから商売であれば商売敵もいる。それに勝たないとならない。これも考えに十分入れてなかったりする。どうやって勝とうか考えていなかった。
実際MVPを作って世に示して、わかってなかったと突きつけられた。
けども、否定された段階ではどう修正すればいいのがさっぱりわからない。ただ、自分が考えていたものが否定されたという事実。虚しい、悔しい、訳がわからない。どうすればいいのかわからない。けども、叫んだところで誰かが解を与えてくれるわけじゃない。もうこの境地に来ているのは魔理沙だけだから。
「あなた」は先に成功した人でもある。また、星にも擬せられている。成功した人はみなこのような試行錯誤の循環を通ってきてる。ならばと、星=成功を見上げる『スターゲイザー』たる魔理沙。
やり始めたことだから捨てたくない。遠い道でも足だけは止めない。
小さな幻想を実現していくには、多くのものに背を向けてきた。あんな物実現できないと。そこで胸を張りたいと願う。
だからまだ終わらない。できる全てをやり尽くす。
新しいものを作っていくにはある意味「普通」の光景。そうして星=成功を見つめて飛んでいくと。まあ、最後は根性でなんとかすると。
考察
まとめると夢を実現するには下記のような感情を抱くということではないかと思います。
1.実際歩みだすと道の遠さを感じる。どういう方向にも行けるがどういう方向が良いのかわからない。
2.そもそも何かの思いがあって始めたのものだろうけども、やりだすとこんなものでいいのか?と思えてくる。子供だましのものじゃないか?と思えてくる。
3.こんな大変な思いをするより籠の中の鳥=サラリーマン生活のほうがいいんじゃないか?と思えてくる。
4.先に歩んで成功した人はどんな気持ちなんだろうかという気持ちになる。
5.実際世に出してみたが、人気がでない。客が何を求めていたか、どうやって勝とうか考えてなかったことに気づく。ただ、気づいたところで悔しい、虚しいという気持ちがこみ上げてくる。
というように、なにか夢を持って歩み出したときによくある話だと思います。
ただ、結局最後は根性で、続けたいという気持ちで、頑張って修正していく。だから最初に思っていたことは「かつての夢」と過去のものになっていく。そんな曲だと思います。
まだまだこの程度の障害は素晴らしい障害だと思います。
それと、この解釈は公式は想定していないと思いますが、星を見上げるもの=『スターゲイザー』の主人公は魔理沙です。一方で、夢を目指して、歩みだして、ちょっと成功して祭り上げられたが、落ち度があって、地獄に叩き落された 『げんきになったときのうた』の主人公も魔理沙、、、、、。
『スターゲイザー』→『げんきになったときのうた』というバットエンドルートも現実にはあります。
誰かに生殺与奪の権を握られている状態。このままでは売れないと薄っすらと何人かはわかっている。でも、様々な足かせでこれがこのまま売れるとして歩まざるをえない。自分たちに決定権はないから。生殺与奪の権を握ってる人にとって魔理沙のことは他人事だから。そして指弾されるという。
『墓標』には、おぞましい障害の例が様々掲げられています。
無論、おぞましい障害にも立ち向かう必要がありますが、所詮くだらないゴミどもの欲求なので、あ、こいつ危険だなと思ったら予め逃げるしかありません。けども、余裕がなければ逃げることもかないません。
ともかく金を持てば、人も世の中もおそろしく思わぬものだ。
逆に一文なしになれば、世の中もおそろしいものである。(前田利家)
無理はいけない。技術的な努力、修正は金が持つかぎりいいけど、魑魅魍魎にはめ込まれそうなら逃げ、やめるのが正解だとは思う。
「何かを実現したい」という思いこそ悪用してはめ込もうという人間はいるから、、。
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