『<正調>佐渡の二ッ岩』(凋叶棕)の考察 ~騙したこともあったが、成功し、畏れられる存在に~
『はるのおと』で成功の息吹が見え、そして大団円!「徒」の実質的なエンディング。そして、他の曲でいくつか匂わせていたフラグの回収も行われている。
成功しての宴会。組織の御大将として遠く名前が聞こえる存在となった。それ故の大宴会。
団三郎=マミゾウ本人じゃなくて、関係者からの目線ですね。マミゾウ本人は何らかの形で遠くに行ってるようです。新しいことを作る上で、チャンスが遠くに有るのなら、チャンスが有るところに行くのは当然なわけなので。
背景概説
東方Projectは自らの作品の設定や音楽をもとに一定のガイドラインのもと自由に二次創作することを推奨しています。
登場人物は二ツ岩マミゾウというキャラクターです。佐渡の妖怪「団三郎狸」をもとにしたキャラクターで、商人だという設定をもとにお聞きください。
歌詞分析
主人公はマミゾウ関係者なのか、大手を振れる存在になったようです。しかし、何らかの形で遠い存在になっているようです。
考えたのは、
1.マミゾウはチャンスを求めて遠くに行ってそちらで成功した。
2.あるいは主人公はマミゾウの組織の構成員。組織は大きくなり、マミゾウはトップになっているが、主人公はあまり職階も上がらなかったがために遠い存在になった。
マミゾウは御大将と言えるような存在になったようです。権力も持ち、有名になったようです。
噂ではだいぶ人を騙してきているようです。
『スターゲイザー』でリーンスタートアップの話をしました。試作をし、こういう物ができるといい、ミニマムバリュアーブルプロダクト(MVP)として世に出した。だけども、このままではうまく行かないとピボットとして修正しての方向転換をした。だけども、別の見方をすれば、「これが売れる!」と言ってた最初の考えでは実現させなかった。場合によっては約束していた期間を大幅に超え、予算も超え、別のことをしたってことでもあります。つまりは「騙した」ということ。
幾多大言の大言壮語をしてきた。そうして成功して、かくもと畏られる存在となったと。
マミゾウが一時的に主人公のところに一時的にきたのかもしれません。だけどマミゾウは再びすぐに遠くに行ってしまうようです。
マミゾウが遠くに行ってしまうことを嘆いても、もう遠い存在。唄えばマミゾウが遠くに行ってしまって悲しいという思いは届くかなと。
そうして、再び宴会を始める。
マミゾウが遠くに行ってしまった。だけども、主人公は忘れないと歌う。
考察
さて、ここで、マミゾウは何者か?ということを時代背景も含めて考えてみましょう。そうすれば、「徒」のCDの別の側面が見えてくると思います。
二ツ岩マミゾウとは団三郎狸を元にしたキャラクターです。
団三郎狸とは何者か?
田村博「信楽狸の発生と流行」民族文化第215号には下記の記述があります。
「団三郎狸とは(中略)団三郎という越後の商人であり、明暦3年(1657)のこと、佐渡の金山で使うフイゴの押皮を取るため、繁殖用として子狸を団三郎が売り、のち自ら佐渡に養狸をしたため島民から尊敬され、同時に狸も氏神様のように祀られたという説がある」
1657年に越後商人団三郎が子狸を売ったということは17世紀頃の人物ですね。
この時代に金山で何が起きていたのでしょうか。
1533年日本に金銀を精錬するための灰吹法が伝来します。
そして、金銀鉱山開発がこの時代精力的に行われています。1601年佐渡金山が発見され、佐渡の金採掘が始まります。
金精錬には高温加熱が必要です。高温加熱をするためにふいごという送風機が使われます。ふいごは送風をするため、空気の漏れを防ぐ事が必要。だけど現代のようなゴムなどない時代、パッキング(封止)につかわれたのは狸の押皮でした。ふいごもこの時代進化をつづけています。
17世紀末頃には天秤ふいごと言われる新しい技術が導入されています。天秤ふいごのパッキングに使われているのも狸の押皮です。そのような時代の中、越後商人団三郎は子狸の繁殖、養狸業、狸の押皮の販売を始め、大成功したということです。ただし、その過程で越後から佐渡に移住しているようです。
つまりはマミゾウ=団三郎狸=越後商人団三郎とは、400年前のTr.1『Future tech』の一翼を担う人物。
当時の先端技術「ふいご」に関わる素材である狸の押皮のために養狸をし、狸の押皮を製造し、大成功し、伝説となった人物。
そうすると、『スターゲイザー』で、魔理沙が追いかけているという「あなた」「星」が誰かわかるでしょう。
きっと、全ての始まりになったのは、
あなたという存在のせいだと思うが。
その全てに抗おうとして、
わたしはどこまで戦えたのだろうか。
マミゾウです。
『ロストドリームジェネレーションズ』、『<正調>佐渡の二ッ岩』の主人公が月を眺めているかのようにね。
先に成功した人間を星として『be your shield』妖夢、『スターゲイザー』魔理沙が追いかけているという構図です。
マミゾウも昔は、『ロストドリームジェネレーションズ』、『be your shield』、『スターゲイザー』、『二色蝶』のような状態を踏まえ、『はるのおと』のように軌道に乗り、そして、『<正調>佐渡の二ッ岩』のように祀られる存在となったのかもしれません。
『Future tech』に対し、何らかの小さな幻想から、成功するまでの一連の道筋、それを歌っているのが「徒」というCDだと考えます。
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