凋叶棕「縺」の考察　～観測と外部作用により変わる関係～

2024年10月16日 07:21

凋叶棕「縺」は夢を追う蓮子と、ないがしろにされたメリーのストーリーだと思います。七夕坂夢幻能を踏まえています。メリーが七夕坂の秘密を暴き、異界に旅立ちます。研究に邁進していた蓮子は遅れてメリーが失踪したことに気付き、違和感を元に探しに行きます。

縺のCDは最後の曲が少女実在性倶楽部が収録されたA版と、少女期の終わりが収録されたB版があります。QRコードが印字されており、QRコードが示すページには、二人が再び手を取り合うか、出会うことがないかと聞いています。最後の状態が重なっているのです。

|夢現|や、|不思議>、|Ψ>は量子力学のブラ-ケット記法です。量子力学は電子などが振る舞う状態を示す学問です。観測するまで状態は重なっており、観測すると状態が定まります。外部作用により電子の状態は変わります。その外部作用を|Ψ>で示しています。

夢はどうなるかわからず、時に夢が実在となります。最後の曲が異なる2曲を重ね合わせてます。先がわからない夢と、何らかの実在を為した現を行きかい、踊るのが人生のかもしれません。男女の出会いも、何かの実現を願う不思議も尽きることはありません。

タイトルのみで意味を語っている曲です。ウィルソンクラウドチャンバーは、内部で霧を発生させ、荷電電子などを、観測できるようにした装置です。夢のようにどうなるかわからない物事を現実にする状態を示しています。

蓮子が研究に邁進しています。研究のみならず、新しい物事は、何か小さな綻びから生まれ、綻びに対する思い入れから始まるものかもしれません。担い手は自分が間違ってないという信念が強く、一人で歩み、異常とすら言われる人間です。

月は夏目漱石の「月がきれいですね」から、恋愛に例えられます。科学は、明証分析総合枚挙からなり、合理的批判に耐えられた普遍的な知識です。人の恋愛のような個別に違う事象には詐術にもなります。月＝相手を見ないと相手がわからなくなります。

タイトルのみで意味を語る曲です。インエフェクチャルは、効果的ではないです。オブザーバーが観測者として、観測で状態が決まるとして、男女の色恋に対して効果的なアプローチを完全に効果的にできる人間なんていません。

効果的なアプローチをできずに、二人の関係は繋がらずほどけました。アプローチされたメリー側も未練があって、聞いて、答えて、教えて、私が必要なの？失礼しちゃうわねといいます。失恋したら諦めて大人になる時なのねと嘆きます。

二人の関係が縺れつながりました。少女期の終わりと対比させアプローチされるメリー側も寂しくて、一人残される不安を抱えていました。アプローチする蓮子側も蓮子自身の独善的な気持ちゆえでしょう。それでも二人の関係が実在となりました。

人間関係は様々な状態が重なっており、観測そして外部作用によって変化します。その人間関係の変化を、量子力学の状態の重なり合いと、観測と外部作用により変化することと重ね合わせて表現したCDが縺ではないかと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？