『それいけ針妙丸』『心強きもの』『怪奇!人形の館』『too late for』『げんきになったときのうた』『しあわせのことば』(凋叶棕)の考察 ~盛り上げられて、落とされて、他人を巻き込んで。~(ネタバレ)
6曲はおそらくセットです。
自分より大きなものに挑んでいった『それいけ針妙丸 ~巨人との戦い~』。実際心は強かった『心強きもの』。だけど怪しい世界に迷い込んでしまい『怪奇!人形の館 迷い込んだ男の運命は』。気がついたときにはもう遅かった『too late for』。はじめはちやほやされていたが危険に気づけずに転落したということだった 『げんきになったときのうた』。これからどうしようと誰かを巻き込んでしまうことになった『しあわせのことば』
という流れではないかと思います。
このうち『それいけ針妙丸 ~巨人との戦い~』、『怪奇!人形の館 迷い込んだ男の運命は』、『too late for』はタイトルのみで意味を示している曲です。
何かしら夢を抱いていったし、最初は実際評判が良かった。実際強い人間だった。だけど、転落していったという流れでしょう。
別記事で述べていますが「徒」は何かを願い成功していった過程です。この曲群でも少し取り上げています。しかしこの曲群ではそのような流れにはなりませんでした。
「徒」(凋叶棕)の考察。夢を追って畏れられるまで(素晴らしさside)
背景概説
東方Projectは自らの作品の設定や音楽をもとに一定のガイドラインのもと自由に二次創作することを推奨しています。また、原曲をもとにどのキャラクターの設定を使っているのだろうと推測しえます。
『それいけ針妙丸』の登場人物である少名針妙丸は小人です。なので、相対的に針妙丸が挑む人間というのは針妙丸より遥かに大きな存在となります。
『心強きもの』はの登場人物は少女雲居一輪と妖怪入道雲山です。この2人が組みで行動していること。雲山がごついおっさんだっということを踏まえていただきたい。
『怪奇!人形の館』『too late for』の登場人物は、原曲を見れば『怪奇!人形の館』はアリス・マーガトロイド、『too late for』はメディスン・メランコリーというキャラクターです。ただ、アリス・マーガトロイドが人形遣いという点以外はおそらく関係ないです。
『げんきになったときのうた』の登場人物は霧雨魔理沙というキャラクターです。きのこを使った、努力家で調子に乗りやすい魔法研究家という設定でみていただきたい。
『しあわせのことば』の登場人物は博麗霊夢というキャラクターです。霧雨魔理沙の親友という設定です。
歌詞分析
それいけ針妙丸 ~巨人との戦い~
何らかの着想をもとに新しいプロジェクトを始めたのでしょう。そして革新的なものであればあるほど挑むものは巨人であり、そしてこちらは小さな針妙丸だと。別記事を書いてます「徒」の『スターゲイザー』のように、あまりにも夢がデカければでかいほど大きな存在。
心強きもの
強い人が出てきました。さてプロジェクトとしてみるとこれは誰かというと、金を出す人間です。投資家であり、あるいは助成金を出すことを決める委員会であったり。
まあそうかんたんに金を出すに値するようなプロジェクトなぞありません。だから金を出すに値しない「軟弱者」を屠る。時代親父は満たされない。失意に暮れると。
そこで少女一輪が現れました。実際強い人間だったのでしょう。なにかやろうとするものがあり、実際有意義なものだったから強く、恐れを知らなかったのでしょう。
時代親父も納得したのでしょうね。なので少女一輪に付き従うことに決めた。つまり金を出すことを決めたと。ただ実際このように金を出すことを決める段階には実際金が尽きかけていることも多いです。「徒」の『二色蝶』に相当します。表面的には強い人間には見えたのでしょうが、助けがなかったらもう終わりの段階のこともあります。
怪奇!人形の館 迷い込んだ男の運命は
タイトルのみで語っている曲です。不穏なタイトルですね。私が考えるこの男とは先程の曲の少女一輪。そして人形というのは、金を出す人間の操り人形になること。金を出すということは、例えば期間や費用を決めて、それまでに成果を出す必要があります。金を出す人間の操り人形になるから人形。そんな世界に迷い込んでしまった男=先程の曲の少女一輪の運命は…。
too late for
タイトルのみで語っている曲です。様々な事情があったのでしょう。ただ、もうおそすぎたと。
げんきになったときのうた
この曲はマザーIIのドラッグきのこを食べてしまったという話をベースにしているでしょう。だけどこの曲の流れだと「英雄として歩んできたが、実際は想定通りに行かず、周りの人間に悪人だと非難される曲」です。
実際なにかにがむしゃらに取り組むということはある意味脳内麻薬が出ているようなものです。しかし、がむしゃらに取り組むがゆえに周りが見えない、色々手落ちな部分がある、定められた期間も迫る。金が尽きるのも迫る。
そしてがむしゃらに取り組んでいるということは、疲労も多く、もしうまく行かないと周りの批判も相まって悲惨な精神状態になる。あたかも麻薬の反動が起きたかのように。
「徒」の方では『二色蝶』のつぎは『交響詩「魔帝」より III.戴冠式』に続いて『はるのおと』です。だけど、彼女には春は来なかった……。
強きもの、心の強きもの、恐れを知らぬもの、何よりも素晴らしいものを作っているという人間と崇められる。少しドアが開かないといった妙なところはありますが……。
未来は素晴らしい日が待っている!愛しいあの人も認めてくれる!そして自分を素敵に思える!
この魔理沙は『心強きもの』の少女一輪の将来の姿であり、愛しいあの人というのは金を出したり、場所を提供するすることを決めた、『心強きもの』の雲山でしょう。
素晴らしい未来が待っている。だけど素晴らしい未来の夢は叶わなかった
努力は実らず無駄に終わった。そして今まで唱えていた夢はまがい物だったと詐欺師として指弾される存在となった。
助けがほしい。誰か助けてほしい。ですが、そんな「こいつは詐欺師として指弾してもよい」という存在になった人間を助ける人間はいません。むしろ今までの反動で周りの指弾がなおのこと厳しく、助けがないように見える。
そうして精神的には完全に駄目になってしまった。
しあわせのことば
助けてほしい。誰か愛してほしい。そうして、誰かを巻き添えにして心中する曲。特に例えば指弾された立場となったのが一家の大黒柱だとかだと残された人間がどうなるのだろう?と考える。なおのこと巻き込んで死のうとする。
ブックレットの包丁を持った魔理沙からも言えますね。魔理沙の勝手な思いではありますが、ここで霊夢を殺すのが霊夢のためでもあると信じて殺して自分も死のうという話。
よくきくと、「愛と呼んでいたい」「あなたとふたりがいい 」「愛を歌いたい」「私の傍にいてね 」などと歌い手が相手を求める言葉で埋め尽くされています。しかし相手がどうかってのはこの曲にはないです。だから一方的な愛です。まあ仕方ないですが。
指弾されて辛くて混乱して、もう言葉では助けても何も伝えられない状態。
一緒にいて、助けて、ただし、一緒に死んでという意味でもあるでしょう。それを愛と呼んでいたいと。
一緒にいてほしい。役目とか決まりとかそんなのどうでもいい、私と傍にいてほしい。この役目とかきまりというのは、『心強きもの』の雲山と約束したなにかなすべきことでしょう。だけどもうそんなものどうでもいい。そばにいてほしい。
やっていたことは失敗に終わった。これから食べていくのどうしよう。場合によっては借金も抱えているのかもしれない。借金取りはどうしよう。怯えるような恐ろしいことだらけ。だけど、そんなものより誰かと愛を歌いたいと。
ただ一緒にいてほしい。だけど、先々がどうなるかわからないから、一緒に死ぬのが正しいんじゃないか?ってのがあのブックレットでしょう。
考察:STAP細胞事件と照らし合わせて
さて、STAP細胞事件に照らし合わせてみてです。小保方 晴子「あの日」と須田 桃子「捏造の科学者 STAP細胞事件」、榎木英介「嘘と絶望の生命科学」は読んでみました。私としては論文に使ってはならないデータを使ったこと、そして生データをきちんと保存せずに、反論できないようにしたこと、小保方氏の論文としてSTAP幹細胞とキメラマウスを発表してしまった以上裁かれるのは仕方ないとは思っています。かばう気はありません。
もし小保方氏の言うことが正しかった上で、きちんとデータの管理がまともで、生データをきちんととって残していたら。STAP幹細胞の再現性を考えて引き返す勇気があれば、STAP細胞事件も別の顛末ではあった可能性はあるとはおもいます。科学には合理的批判はつきものなのだから、批判されたときに反論できる材料は残さないとならない。
ただ、ここで書きたいのはあくまで夢を描いたが夢叶わず、指弾される立場になった人の心理です。「屠」とSTAP細胞事件がともに2014年のことと、夢を描いたが指弾され追い詰められた人間の話なので関連があるのではないかと。なので小保方氏の話が正しいという前提で進めていきます。
小保方氏は生物培養の世界で研究をしていて、アメリカハーバード大学のバカンティ研究室に行くことになりました。バカンティ教授はすべての組織に共通するスーパー幹細胞があるのではないかと言う着想をもとに研究をはじめました。まさに大きなテーマをもとにした巨人に立ち向かう『それいけ針妙丸』。
そうして研究をアメリカで進めていたところ、名声が高まり、日本でもお呼びがかかることになりました。まさに『心強きもの』の少女一輪として。雲山は日本で小保方氏を呼んだ教授や研究員たちですね。
STAP細胞関係にはSTAP細胞そのものと、STAP幹細胞というのがあります。STAP細胞というのは様々な細胞に変わる多能化がなせる「遺伝子が働いただけの細胞」。そしてSTAP幹細胞は「実際に多能化がなせる状態になった細胞」です。小保方氏はSTAP細胞は作れていましたが、STAP幹細胞は難しいのではないかと考えていたと「あの日」では述べられています。しかしSTAP幹細胞ができればインパクトが高いと、「周りの人形」となって怪しい館に迷い込むことになりました。『怪奇!人形の館 迷い込んだ男の運命は…』もうおそすぎた、、、『too late for』。
そうして、多能性をなすSTAP幹細胞としての発表が行われました。素晴らしいものを作っている人たちだと。そしてすごいと自分を呼んでくれた人たちも喜んだ。しかし、多能性をなすSTAP幹細胞としては再現ができなかった。まがい物を作った人として指弾される存在になった。実際反論するための生データも出せず反論もできず周りが全て敵に見えて追い詰められる状態になっていった。『げんきになったときのうた』
誰か助けてほしい。救ってほしい。そうして……。『しあわせのことば』
屠が頒布される2014年8月13-15日に行われたコミケの直前の、2014年8月5日。STAP細胞事件で小保方氏の上司の立場にあった笹井芳樹グループリーダーが自殺しています。
場合によっては誰かを巻き添えにしてしまうのかもしれません。
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