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「光復香港」三〇〇〇キロ先のフリーターを衝き動かす。 香港ルポその1



 

日常化してしまった香港のデモ

その勢いは過激さを増す一方だ

その多くの参加者は自分より若い学生諸君だった

催涙弾の煙幕にやられ涙を流す者

警官に殴られ血を流す者、親中派のヤクザに襲われる者

一方日本では頭がパーな、いかにも「ONE PIECE」や「ナルト」や「タピオカ」が好きそうなヤリチンヤリマン大学生が夜な夜な繁華街で大声を出しゲロを吐きまくる。

香港の学生諸君は青春を捨て香港警察、香港政府、そしてその上に大きくのしかかる中国共産党に立ち向かっていた。

香港では今何が起きているのか。

青春のレールから脱線したフリーターの僕は衝動にかられ、香港へ飛んだ。

貯金は0円だった。




 
 八月十二日。夏休みの真っ只中である。東京都新宿区歌舞伎町。アジアで一番の繁華街を誇る街。

    街はより一層賑わい、学生たちは街へ繰り出し青春を謳歌していた。
 
 青春を楽しんでいる学生は非常に厄介である。大人数でいることによって気分が大きくなり、周りが見えなくなる。ギャースカギャースカと騒ぎ人の話なんて全く聞きやしない。そんな厄介なやつらが、僕がバイトをしている飲食店に大挙してやってきた。
 
 「こんな仕事時給千円じゃ割に合わねーよ!」
 
 そう愚痴をこぼしながらせっせとホールを行ったり来たりして働いていた。やつらの相手をするのは非常に大変である。

 夕刻、客足が落ち着いた頃、休憩の時間が訪れた。外は人々でごった返している。そんな中で休憩なんてできるわけがないので、仕方なく近くのコンビニで食料を買い込みバイト先のバックヤードで食べることにした。

 バックヤードにはテレビがついている。僕はファミチキをかじりながら夕方のニュース番組を眺めていた。衝撃のニュースが目に飛び込んだ。

 ・香港デモ隊が空港を占拠、香港国際空港は全便欠航
 
 ファミチキの手が止まった。
 驚きを隠せなかった。その国の顔ともいえよう空の玄関である大都市の香港国際空港が封鎖されたのだ。
 
 香港国際空港といえばアジア最大のハブ空港として有名であり、その規模も利便性も、そして利用者数も航空貨物数も世界でトップクラスを誇る。
 
 テレビには混乱する観光客、声を張り上げ抗議するデモ隊が映し出されていた。

 香港では一体何が起きているんだ。

 デモが行われていることは知っていた。デモ隊を襲うヤクザグループの存在や二百万人を超える抗議活動は連日ニュースで報道されていて、何度も目にした。しかし国際空港が封鎖されるほどのものとは思いもしなかった。


 逃亡犯条例改正によって香港人の自由が脅かされる。そのことを必死で抵抗し、世界にアピールする香港の若者たちがテレビに映し出されている
 

 彼らが反対する「逃亡犯条例改正案」は一体何か。 
 

 逃亡犯条例改正案は香港にいる容疑者を中国本土へ簡単に引き渡すことが可能になる条例案だ。

詳しくはこちらhttps://www.sankei.com/world/news/190612/wor1906120020-n1.html

 犯罪者は罰せられて当然。本土に引き渡すことによって犯罪者が居なくなるから良いことだ。

 確かにそうだが、ここ中国おいては意味が違ってくる。

 ウイグルやチベットを見ればそれは一目瞭然だ。罪なき人々は、収容所へ送られ拷問され殺される。「ウイグル人だから」だとか「チベット人だから」だとか、そんな理由だ。中国共産党によって不都合な人種、部族、思想は次々と弾圧される。土地が奪われ生活が奪われる。

   中国共産党の「犯罪者」とは「反共産党」だからだ。

   香港の若者たちは中国本土で一体何が起きているのかをよく知っている。

 ウイグルやチベットを「香港人」に置き換えてみればいい。


中国共産党は自由で開かれた一国二制度の香港を本格的に赤色に染め始めたのだ。
 
 

「わーすごいね」

 アルバイトの従業員が呟いた。なんとも軽い響きだった。
 
この出来事は決して対岸の火事ではない。

ウイグルやチベットを「台湾人」に置き換えてみたらどうだろう。

台湾の人々も中国の脅威をよく知っている。

 だからこそ親中派である中国国民党の馬英九総統が直接選挙で負け民主進歩党の蔡英文が総統に選ばれた。対中強硬派の蔡英文総統は台湾独立を望む多くの国民に支持され、日本との関係も良好だ。

 もしも台湾も中国共産党の手によって中国の一部にされてしまったらどうなるか。

その次は日本なのである。

尖閣諸島の領土主張や太平洋の違法漁船、琉球独立、中国人による土地の買収。

中国共産党は足音を立て、じわりじわりと既に日本へにじり寄っていた。


もういちど、ウイグルやチベットを「日本人」に置き換えて考えてみよう。それがいかに恐ろしいことか、よくわかってくる。

中国共産党の脅威はもう目と鼻の先だ。

香港が中国共産党の手に渡れば、その次は台湾。その次は日本である。他人事ではない。「わあすごいね」や「こわいね」では済ますことができなくなった。

 
香港へ行かなくては。この目で見なければ。香港の未来はどうなる。台湾の未来はどうなる?日本の未来はどうなる?アジアの未来はどうなる?
 

香港へ行かなくては。この目で見なければ。民主主義国家の一員として、この目で見なければ。



休憩時間が終わり職場に戻った。

僕はまた、調子に乗って浮かれた学生たちを相手しながら愚痴をこぼす。

「こんな仕事時給千円でやっていられるか!」 

とか言いながらバイトの片手間に、香港行きの格安航空券を探しまくった。

◯その2に続く 

 

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