【紫陽花色の憂鬱】文筆家の憂鬱_ふるたみゆき
そろそろ今年も『水の器』が届くころ。とカレンダーを仰いだ拍子に、表のチャイムが鳴りました。
数年前にパテ・アンクルート世界選手権へご一緒したご縁で、京都の陶芸家から毎年『水の器』と題したガラスの器が送られてきます。
特にいつごろ下さいと指定はしておりませんが、毎年この水無月に送って下さるので、それも意匠と思って楽しんでおります。
さて、今年の器は……と、わくわくしながら桐箱を解きますと、只ならぬ彩が現れました。
句が添えてあり、
『星の輪の めぐりの深き 君いずこ』
掌で包むと、陶芸家の惑いゆく心が感じられます。恋でしょうか。藍でしょうか。哀でしょうか。……いずれにせよ、エールを送ります。がんばれ、陶芸家。パテ・アンクルート。パテ・アンクルート。