【水色のフライト】文筆家のフライト_ふるたみゆき
朝の明るい空港に着くと、搭乗時刻まで間がありました。水色の飛行場は人もまばらで、待合室からはみずみずしい機体が眺められます。
さて友人を待ちながら、星座神話について考えを巡らせました。…
そも星座の起源は古代エジプト。すでに正確な暦が在ったと聞きます。紀元前6世紀に至れば、バビロニアにて太陽の円軌道上の12星座が定められ、約300年後のギリシャでは48星座に。その後、約1,500年間に亘り愛用されて来た星図は、大航海時代を迎えて大きく拡がります。船乗りたちが見つけた南半球の12星座が加入。さらに天文学者たちが独自の星座をどんどん制作。20世紀に国際天文学連合が88の星座を定めてようやく、星図は落ち着いたのであります。
このような経緯をふまえて気懸りなのは、つまり、大航海時代以降に見出された星座には神話がないという事です。ギリシャ神話と結びついた星座以外は、物語をもたないのです。これはゆゆしき事ではありませんか。たとえば彫刻室座。南のかんむり座。顕微鏡座。うさぎ座。……
ふと顔を上げると、飛行場をゆく機体の尾翼に「鶴丸」のロゴマーク。そういえば鶴座という星座、それも神話をもたない星座があった。
そこで今回は、鶴座の神話を創ることにしました。
鶴座神話(ふるた創作ver)
昔々、幻の名曲を探して旅する者がいた。ある晩、道に迷い野に倒れた旅人の夢枕に鶴が降り立つ。『夜が明けたら、私の飛び去った方角へ進むように』と神託を授けて鶴は飛び去る。直ぐに旅人が目を覚まして外へ出ると、夜空の星々が鶴の羽を広げたかたちに瞬いている。
明くる日、鶴の翔んだ方角へ進んでみれば、さる館から美しい音楽が。それこそ、旅人の探していた幻の名曲であった。
はっとアナウンスに目覚めて、掲示板を仰げば搭乗時刻。スーツケースを引いた友人たちが、向こうから手を振っています。まずは彼らに、鶴座の神話を聞かせてみましょうか。