起立性頭痛(脳脊髄液漏出症)の娘の記録 ブラッドパッチ編
はじめに
前回の記事(https://note.com/yumemukamo1412/n/n89e079700b29#8c647d7b-6d2b-4b82-b7b9-212093a2498e)にて、「これは、起立性調節障害や片頭痛(偏頭痛)と間違われやすいけれど、また別モノである「起立性頭痛」という病気に娘が罹り、軽快してゆくまでの記録です。」などと書いた私ですが、実はまだまだ闘病は続いていましたので、今回はその闘病記録2となります。
久々に自分の記事を読み返して、
軽快してないし!!ヒロアカか!!
と心の中の吉本新喜劇が突っ込みを入れました。
多分、この脳脊髄液減少症(または漏出症)疑いと診断された方々にとって一番知りたいことは、今後の治療の流れや実際の記録、なのだろうと思うので、素人の日記でしかありませんが、記録を残しておこうと思います。
医療従事者ではないただの患者の家族が筆者ですので、ここに医療的に価値のある情報はありませんが、参考程度にどうぞ。
点滴治療(2週間入院)のその後の経過
小学校6年生の終わりに点滴を2週間ひたすら受けて仰向けに寝る、という保存的入院治療を受けた娘は、中学に入学しました。
しかし、やはりすぐに朝は起きられなくなり、夕方に軽快する時もあれば本当にずっと痛みが続くこともあり、登校はほぼ出来なくなっていきました。
そんなわけで第二フェーズ「生食パッチ」をブラッドパッチの可否を決めるための下準備として行うこととなりました。
生食パッチ施行
中1の秋、2022年9月と10月
この二回にわけて、生食パッチ施行しました。
これは、脳脊髄液減少症に対する硬膜外腔への生理食塩液注入法というやつです。詳しくはググっていただくとして、要は背中から硬膜外腔というところに注射器で生理食塩水を注入するわけです。すると一時的になんですが、硬膜外腔内圧が高められ、「脳脊髄液減少症の疑い」のある患者さんも圧が回復して楽になるんです。
脳脊髄液とやらがどっからか漏出していて、頭痛が起こっている。でも前回やった点滴治療や、こういった生食パッチでぐーっと一瞬だけでも内側から水分を増やしてやることによって、脳が「脳脊髄液の圧力、なんか戻ったんちゃう??」と感じ、楽になるらしいんですね。すごい適当な説明なんであんまり鵜呑みしないでほしいんですけど。医療サイトだと「見かけの圧」なんて表現されてたりします。
これだけで治療が完結する幸運な人もいる、らしいです。エビデンスはないんだけど、なぜか治ってしまう人が存在する。点滴治療もそうなんですが、「何故か」この段階の治療で症状が軽快する人がいるのは事実なんですね。でも、不思議なことに、まだ「どうして軽快するのか」がはっきりしていないそうです。一時的に楽になる理由の説明はできても、長期的になぜそういう安定した状況が続くのかは分かっていない、ということのようで……マジか……。
それでも人体に悪影響を及ぼすことがあまりない治療なので、ひとまずブラッドパッチの前にこれは一度やってみて、人体の反応をみて、ここで軽快するならよし。軽快しない場合は脳脊髄液減少症(漏出症)なのかどうかの判断基準とする、ということのようです。
娘の場合、「おそらく脳脊髄液減少症でしょう」という診断はついていますが、診断名はまだ「脳脊髄液減少症の疑い」でした。この段階の患者さんは、結構な割合の人が「疑い」状態なのかもしれません。
丁度中間テストと文化祭を控えている時期で、迷ったけど、注射してみたところかなり反応はあり、一週間ほど頭痛が治まっていました。
ただし、注射した箇所を中心に、腰の痛みはある。
これが厄介で、結局注射して1週間ほど頭痛から解放されても、腰が痛すぎて動けない。学校にやっぱりいけないわけです。
学校に行けるほど腰が回復した頃には、起立性頭痛(脳脊髄液減少症による頭痛)が復活している。
結局、入れた生食が体内から自然と漏出して、また圧が元に戻っちゃった、ということなんだと思います。
2回、この生食パッチをやり、頭痛軽減の反応を確認したあと、娘は「ブラッドパッチ」の適応患者となりました。
病名が多分ここから「脳脊髄液減少症」になった、気がする。
第1回目ブラッドパッチ施行(2023年1月10日)
2023年1月10日に、ブラッドパッチ施術1回目をやりました。
この病気の患者さんの進む道は基本、一本道です。
①診断がつく
②ときどきクリニックなどで生食の点滴をする(一時的な頭痛軽減)
③一週間の入院(ひたすら点滴しつつ寝るだけの入院治療)
④日帰りで行う生食パッチ(ここで生食パッチを定期的に繰り返して日常生活を無理やり送り続けるという強者も出てくるらしいが、娘の反応をみる限りでは厳しそう。注射後の腰痛まぁまぁキツイ。あとほんとに漏出のキツイ人間がこれやっても1週間ぐらいで頭痛は再開する。頭痛再開の期間は人によって違うし、生食注入の量にもよる。少ない量しか入れられなかった患者は、頭痛軽減の効果もすぐ切れやすいです。逆に大量に生食を注入することに耐え、一か月ぐらい頭痛がない状態が継続する人も居るみたい)
⑤そして最終的に、ブラッドパッチ。(人によっては何回もこれをやる。一回ごとに1週間の入院と次の一週間も安静仰臥が必要)
ブラッドパッチは雑に言えば、生食パッチの血液版で、背中から注射器を使って自己血を入れるわけです。
血って、固まりますよね。血糊をイメージしてもらったらいいんですが、体内でそれっぽい反応が起こる。血糊は、食塩水と違って消えたりしないため、漏出箇所をそれでうまいこと塞ぐことができれば、ある程度、硬膜外腔内圧が保たれた状態になる……ことを期待して行う治療です。
(正確には注入してから血はある程度凝固したり、また緩くなったりするらしい。不思議)
しかしこれはやってみてハッキリと結果が出るかどうかは分からない治療です。娘の場合は漏出箇所がわからない。だから一応腰と首に血を注入するわけだけど、それは「その辺りに丁度漏出箇所があれば、効果があるかもしれないから血を入れる。効果、あるといいな…」ということなんですね。ふんわりしている。マジでふんわり。
ある種、博打みたいなものです。
ちなみに私たちは、住んでいる場所が丁度、脳脊髄液減少症・漏出症の治療をガッツリ行っている全国的にも有名な医師がいる病院の近くだったので、車飛ばしてすぐ病院に着いちゃうという幸運に恵まれました。体感的には近所のコンビニ。
後から知ったんですが、同じ症状で入院していた他の患者さんで、九州からここにいらっしゃった患者さんもいて、びっくりしました。ちなみにここは本州です。遠いよ九州……。
思ったより、どこでも受けられる治療というわけではないのかな。
この病気を診断できる医師もまだそれほど多くはないという実情がありますし、入院治療できたことは幸運だったのかもしれません……。
お近くの脳神経外科クリニックなどから、専門治療をしている大病院へ紹介してくれる例もありますので調べてみてください。
うちはそのルートで今の病院に辿り着きました。詳しくは前の記事(https://note.com/yumemukamo1412/n/n89e079700b29#8c647d7b-6d2b-4b82-b7b9-212093a2498e)をどうぞ。
入院当日、午後からカンファレンス受けにいったわけですが。
カンファしつつ、看護師さんが一言。
「では今からブラッドパッチ用意して夕方ごろやりますね」
「えっ今日!!!?!?!?!」
「お母さんもブラッドパッチ見ていかれます??」
「えっ?!?!見れるんですか?!」
「はい。ご一緒に見られますよ~。見ます?」
いやピクニック一緒に行きます??みたいなノリか。
よく考えたら入院当日にブラッドパッチやって、その後は全部、安静+点滴+経過観察のための入院なんですよ。当然だった。でもなぜか娘も私も当日だと思っていなくて、心の準備できないままに施術へ……(笑
まぁ、下手に明日やりますとか言われなくて良かった。
どうせ恐怖と鬱で娘は一睡もできないだろうし……。
親の私も施術室となる血管造影室に入室できることになったので、私もその場でブラッドパッチを見守りました。
造影剤いれて、最初は生食を少量ずついれながら針が目的の位置まで侵入しているかどうかを何度も撮影しつつ確かめ、最終的には自己血を入れます。
局所麻酔で行うので、患者には意識があります。
娘は恐怖と緊張のあまり途中は朦朧としていたんですが、先生から施術中はしょっちゅう状態を聞かれ、それに答えないといけない。意識を飛ばすことが許されない治療なので、可哀想ではありました。全身麻酔なら気が楽なのにそうはならないのが辛いところ。
傍で私は見てましたが、傍、といっても造影装置の可動範囲の外側に置かれた椅子に、被爆を防ぐためのエプロン装着させられて座った状態。立つことは禁止されます。なので当然、手を握ってあげることもできません。
私はただの無能な置物。居る意味ある?と思いつつも貴重な経験なので目を皿のようにして見てました。
(が、座らされてる位置的に、施術箇所などはほとんど見えません。)
施術の邪魔になってもいけないので、声もほとんど出せません(笑
かろうじて、撮影の瞬間だけ、先生も看護師も控え室の方に引っ込むので、私と娘だけが造影室に残されるそのタイミングを見計らって、
「が、がんばれぇ……」
と控え目に声をかけるのが精一杯なんですが、もう既に極限まで頑張ってる娘にこれ以上頑張れって言うのが酷なようにも思えて、でもいいセリフなんか一つも思いつかないんですよ。ほんの2秒ぐらいしか時間ないですし長いセリフなんか言えないんです。本人も朦朧として私の声なのか看護師の声なのかわかんなかったらしいですし。
(でも本人は後から、ママの声で元気づけられたよとは言っていたが……)
心臓に悪い数十分でしたね……娘の首に注射器の針刺さったままなの見てたら怖いですよやっぱり。
娘いわく、麻酔が効いてからはごりごりされる感覚と恐怖だけで痛みはないんだけど、自己血入れるときはやっぱり相当痛い。その痛みに耐えて、なるべく多くの血液を入れたい。が、もう痛くて無理!って娘がいうと、「ハイハイじゃぁ終了ね」ってあっさりそこで血液注入は終了になります。
あくまで患者が主体的に受け入れられるだけの血液しか入れませんから、医者が強行して無理やり多くの血液を一滴でも入れる、といった治療ではありませんでした。(他の病院ではどうかは知りませんが)
首の方は結局、内側の膜?が硬くて針が刺さらなかったらしくて、何度か針の位置を確かめるべくトライしたんですが、最終的には安全のため断念されました。
先生「そりゃ無理やり刺せば簡単に刺せるんだけどね、針だから。でも脊髄傷つけたら怖いでしょ、なので今回は引きました」
ウン……引くのも勇気……もう想像だけで泣きそうなんでご安全にお願いします……ありがとうございます。ちなみにこの先生、日に何回も人のブラッドパッチやってるベテラン先生です……多分この日も午後から3人分やってた。娘は午後の1番目でしたね。
腰のみ、自己血が入り、ブラッドパッチ1回目は終わりました。
造影剤の影響で発疹が出たりもしましたが、すぐ点滴に薬を入れていただき、大丈夫でした。
同時にこのブラッドパッチ入院では、造影剤に放射線物質を入れており、その放射線物質の体内残存率を検査して、漏出がどの程度なのかを見ます。
だから施術後、おしっこをおまるに取らないといけないんですよ……なぜならおしっこにも、しばらく放射性物質がでるから。おしっこが放射性廃棄物なんです。ひぇぇ。
(一週間ずっとおまる生活ではないです。途中からはトイレにいけます)
あと、撮影も、脳だけでなく腰の下あたりまでを含めて大がかりな撮影をします。
よく、街のクリニックでMRIとったけど器質的な異常がないから偏頭痛ですね、でハイ終わりになるのがこの症例の発見が難しい理由のひとつです。脳だけを簡易的にとったMRIでは微細な脳脊髄液の漏れはわからないんですよ……。また、この症例は偏頭痛の薬では治療できません。ちゃんとしかるべき病院に繋いで貰わないといけません。
放射性物質の規定時間後の体内残存率は14%とか言ってたかな。
どうもこの病気の人の検査結果の中でも、うちの娘の放射性物質残存率は低いらしく、この数値が低いということはつまり「いっぱい漏出しているよ」ということなんですね。
漏出があんまり無い人は、この残存率が高いわけです。
ツライ。何がツライって、こんだけ明らかに漏出してても漏出箇所の特定はできなかったことだ……。
結論から言うと、やはり1回ではあまり効果はありませんでした。
ブラッドパッチやるひとは大体3回ぐらいは平均でやるそうです。薄皮を剥ぐように、少しずつ、少しずつ楽になっていくならそれでも救いがあるのですが、難治性でまったく効果の出ない人も中にはいます。やれば必ず効果が出るという治療ではない。
とくに娘の場合は脳脊髄液減少症(漏出症)になってから結構な日数を経て、やっとここまで辿り着いたため、1度のブラッドパッチでは効果は薄いだろうとは言われていましたが、やっぱりか~という感じです。
3か月ぐらいの時間をかけて、体内に入れた血が変化し、見た目の症状は軽快したり悪化したりを繰り返します。自律神経が数か月かけてゆっくり正常に戻っていく。そして結果的に頭痛がどうなったかの推移をみるわけですが、娘の場合、やはり学校にはほぼ、行けずじまいでした。
第2回目ブラッドパッチ施行(2023年7月24日)
そんなわけで、同2023年7月24日、ブラッドパッチ2回目を施行しました。
夏休みにはいってすぐの施行です。1回目のブラッドパッチから半年ほど経過しています。
ちなみに今回はもう、病名が「脳脊髄液漏出症」と明記されていました。
前回のブラッドパッチで漏出が数値的にも証明されたからでしょうか。
「減少症」ではなく「漏出症」となっていました。
今回は、前回硬くて針が通らなかった箇所より少し下に位置をずらして、首にも注入成功しました。首と腰、2箇所に自己血を注入できたわけです。
前回よりすんなり針が入ったからなのかなんなのか分かりませんが、注射箇所を中心にしばらく起こる神経痛も、今回は随分マシだったみたいです。
前回は退院時の娘の動きが、ぎっくり腰のおばーちゃんのようにスローモーションでしたが、今回は結構動けていましたね。
あと、今回は放射性物質を注入というのはありません。1回目よりそういう意味でも楽ですね。
いま、治療から1か月たったところですが、経過は思っていたより順調です。前回より、調子のいい日が多い。まだ1か月目なのでなんとも言えませんが、少なくとも前よりははっきりと、効果が出ているように思えます。
首にも施術できたことが大きかったのかな??
2学期、登校できればいいんですが、娘は脳脊髄液漏出症以外にも、OD(起立性調節障害)なども併発しているようですし、普通に偏頭痛もちでもあります。なかなか一筋縄ではいかないと思っています。
なお、大病院ではなくかかりつけのクリニックの方では、偏頭痛の対策として、頓服とは別で、毎日飲む新しいお薬が出されました。
脳という臓器は、痛みすら記憶してしまい、勝手に反芻してしまうらしいんですよね。偏頭痛が起こっていないときでも、ずっと痛みが続くというこの謎の現象。偏頭痛に長年苦しむ難治性の方々には、なんとなく、体感で分かっていただけるのではないでしょうか。説明のつかない、痛みの継続。
うちの場合は起立性頭痛(脳脊髄液漏出症)が根本として存在しているから余計に分かりづらいのですが、どうもそれとは別で、偏頭痛が起こっていないはずの時も、脳が記憶してしまった痛みを無駄に反芻している疑いもあるということです。ちょっと痛みを司る機能がおバカになっている、という状況かもしれないね、と。
なので、痛みへの過剰反応を抑え、無駄な反芻をやめさせるための効能を持つお薬をいまは毎日服用しています。薬品名は伏せます。それは、かかりつけ医からきちんと専門的な説明を受けて処方されるお薬ですので。
ただ、これも難治性の偏頭痛の場合、通常のクリニックだとなかなかこの薬の処方まで行き着けない可能性はあると思います。随分前にかかっていたクリニックでは、治療のバリエもなく、先生もあまり偏頭痛に詳しくないようで、乱暴な言葉で匙を投げられた形だったので……
諦めず、難治性の偏頭痛にも匙を投げず取り組んでくれるドクターのクリニックを探すことが大事です。
この薬を服用し2か月ほど経過しています。事実だけ記載しておきますと、確かにこれを服用しはじめてから楽になってきました。
起立性頭痛に隠れてよく掴めていなかった、
「偏頭痛が起こり回復していく経緯」
が目に見えてわかりやすくなってきました。
ブラッドパッチ2回目の退院後からは、頭痛がほとんどない時も多くなってきています。
娘曰く「重さ、はあるけど、痛みはない」という状態がわりと続く。
ときどき外出などで身体を動かして負荷を与えたり、台風がくると偏頭痛が出て寝込むけど、そのときは偏頭痛の「頓服」を飲んだり、気圧が元に戻るにつれて落ち着く。「回復する」という実感が今はあります。
今まで何を飲んでも「効いているかいないかわからないしとにかく痛い」状態だったことを思うと、すごくメリハリがついてきました。
起立性頭痛(脳脊髄液漏出症)の治療とは並行して、偏頭痛としての治療もこうして進めているということです。
そんなわけで現在までの経緯を記しました。
同じ病気で治療方法について知りたい人の参考になれば幸いです。
ただ、この記事を書いた私は単なる一般人ですので、間違ったことを書いている可能性もあります。治療はドクターときちんと話の上で、分からないことはきちんとドクター本人に質問して、納得の上で進めていってくださいね。