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欲しいものがたくさんあるの.

美智子は頭を抱えて悩んでいた。
この女が悩むことはいつものことなのだが、今日はより一層、目に涙を溜めて口を開けて悩んでいた。美智子の悩みは、当然 男 のことである。美智子は、よく『男になにも期待してない!』と友達などに言ってるが、この女は誰よりも男に依存しており期待してるのである。なので、男が自分の理想から少しでも離れてしまうと、彼女は困惑して、泥沼の感情に浸ってしまうのだ、馬鹿だろう?

『結婚前提に付き合いたい』と言われた男の言葉をあっさり信じたにも関わらず、安易に体の関係を楽しみ、愛が切れたのである。
美智子は目ん玉をグルグルしながら考えた。
あんな言葉を言ったのにLINEの返事のレスポンスが遅すぎるのは遊ばれてるのではないか、もうエッチしたから用済みなのではないのかと、ああああ、うざい!学生みたいなデートも、お会計の気持ち悪さも全部こっちは我慢してのに、メンタルケアもできないなんて、安易に抱いて欲しくない!気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い、きもちわるいんだよ!!!!美智子はすぐさまLINEをブロックして、すぐさま違う男に、『久しぶり、元気?』とLINEをした。

美智子が一番気持ち悪いことはわかっている。けれど、彼女の歪んだ恋愛観はもはや手遅れなのだ。わかってくれたまえ。

ああああッ、

美智子は大雨の日、母親と夜逃げをした。美智子5歳である。


『お父さんとはもう会えないの?』
私が聞くと、お母さんは私の顔も見ずに、『死んだと思いなさい。』と言った。

父親がどんなものなのか、私にはわからない。私の知っているお父さんはパチンコをずっとしていて、タバコの香りがいつもあり、大きな声を張り上げて、お母さんや弟を泣かせ、私に大人のビデオを見せるような人だ。( 幼稚園生の私にはとても刺激が強く当然ながらトラウマになった.)

父親に強い憧れをもっている私は、女になってからは、年上の男性に愛を求めていた。安心感が欲しかった、私という存在を認めて抱きしめて欲しかった。だが、男女の関係になるとその行為がとても浅ましく気持ちの悪いものに感じてきて私の恋は終わっていく。初めて、大の大人が私の為に『別れたくない』と悲願し泣いた時、これほどもない興奮を覚えた。それは、なんともいえない光悦感であった。私の事を、私の体を支配してる男たちの涙は、私にやっと安心をくれたのだ。( これは、父への復讐なんだ。年上の男性が泣く事で父へ復讐している気分になれたのだ。私が泣いた涙の量に比べればなんともない。君達は、感じたことがあるか?母親が毎晩毎晩朝から晩まで働き、幼い弟と天井の光を見ながら寝る事を。父の借金取りに怯える日々を。お金がなく友達の当たり前が私には特別で、羨ましく感じることが。)

大人になっても、私は女を見せて
アナタガタノ玩具なのである。
そうゆう魅せ方をしなければ、相手にされないのでそうするしか私には術がないのだ。

あの日、大雨の日、引っ越しのバスに揺られながら不安に感じた5歳の私は、大人になった。

大人になっても、
愛してるもわからない。
寂しさも怖さも消えない。

ただ、私は、5歳の私を抱きしめたいだけだ。大丈夫だよ、って、頭を撫でてあげたいだけだ。( 叶わないんだよ、)

だから、寂しい気持ちにさせないで。
気持ち悪くさせないで、
馬鹿だから、抱きしめて、いや、殴って。