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ペクトラジ  第八部 「練兵場の秋」

秋の練兵場は、雑草でいっぱいになる。
 人夫で男は重労働をになうが、草刈は比較的軽作業なので、
女の人夫の担当となる。
 
そのほとんどが韓国部落の女性である。
部落民総動員となるため、部落が空になる。
子供達を残すと危険なので、作業の傍で遊ばせる。

ヨドセも傍についていたが、剛も仲間に加わっていた。
練兵場には五~六か所の大きな草の山ができるのだが、草が枯れるまでその山は放置される。
 
完全に枯れると、それに火を放ち、焼き尽くす。
その作業も部落女性の仕事である。

火をつけて、監視するだけの簡単な仕事なので、日当はわずかな金額であるが、そのかわりに焼き芋をつくる材料の薩摩芋が支給された。

火が少しでも残っていると芋は黒焦げとなるので完全に火が消えて灰の状態になった時に芋をいれる。
余熱で待つこと一時間程度で、焼き芋ができあがり、それを子供達も交え、全員で食べるのである。

もちろん剛も皆と一緒にほおばった。
薩摩芋は本場の鹿児島産で、しかも草の灰で焼いたものなので、
その香りが何とも言えないとびきりの贅沢品である。

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