しにがみあそび
ええ、なんだい。殺し屋?ヤクザなんだから、そんな話いくらでもあるよ。
見たこと?見たことは…それほどないね。そりゃそうよ。おれらみたいな下っ端が殺し屋を見るときってのはね、殺されるときだけ。
だからね、おれが見たのは、一回だけだよ。
むかしウチの組がさ、ナントカスター…えーと、あ、ビューティフルスターだ。そんな名前の女子プロレス団体に目をつけたんだよ。借金だらけで、ツラがいい女がいて、熱狂的なファンがいる。じゃあウリやらせればアガリが取れるよねって。かなり圧力かけたのよ。おれ?おれは…ちょっとトラック”入れた”だけだよ。
それで、ある日、その団体から女が来たんだ。そいつはまあ、社長でも役員でもなんでもないワケ。
で、そうなると、とうぜん詫びを入れに来たわけじゃない。女の目を見たら分かる。出入りだよ。女一人で。
で、ウチの親分は昔気質でさ。女一人に男大勢では恥だって思ったんだろうね、若頭の兄さんとサシでやらせようってなって。
へへ…どうなったと思う?
犯されたんだよ。え?違うよぉ。兄さんがさ。ビンタ張られてぐにゃぐにゃになったと思ったら、ズボン脱がされて、ケツに指突っ込まれて、玩具扱いでさ。折れてたよ、ちんこが。
それで親分キレて、ぶっ殺せって。みんなチャカとかポン刀出して。すごいよね。え?おれは逃げたよ。
はは。だから生きてんだよ。おれだけ。ははは。
(…暗い。動けない)
女子プロレス団体ビューティフルスターの刺客、高島華は、自室で、体を縛られ、目隠しと猿轡をされ、椅子に座らされていた。
「…殺し屋同士のほんまのバーリトゥード」
男の声がした。
「これが『しにがみあそび』。堪忍な」
高い靴音が華の周りを回った。華は土足にムカついた。
「…ええこと教えたるわ。ほんまは言ったらアカンねんけど、これから殺すんやから言ってええやんな?」
「ジョン・F・ケネディ暗殺したん、おっちゃんやねん」
【続く】
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