フクロウ・ノート(6)学びを科学する:最大限学びの効果を得るには?
来週から大学院の授業がはじまります。最初は学部も修士も共通の内容で、学びのプロセスを科学的に理解して、これから卒業までの間どのように学習計画を立て、どのような手法を取るべきか、それは何故か、腹落ちさせるところからスタートするようで事前課題が送られてきました。
では早速スタート!まずはシラバス全体を把握して学習計画を立てよ、と。
最初にシラバス全体の目次をざざっと読み、その授業で①学べることは何か(ゴールイメージの設定)、②自分が得たいことは何か(目的意識の明確化)、③それらを学ぶことは自分にとってなぜ重要かを(動機づけ)、自分の言葉で文章に書きだします。これは後述する「学ぶ方法」と効果の最大化に関連します。
次に学習計画をたてます。ここで重要なのは一夜漬けにならないようにスケジューリングすること。これには科学的な根拠があって、一夜漬けをしても学んだことが短期記憶にしか貯蔵されず最大24時間で忘れてしまうことが多いから。あたりまえか…。反対に長期記憶は、脳は繰返し神経細胞がシナプス結合を介して伝達信号を「一定の間」を置いてから送ることで最大化されると。学びの効果はいかに記憶を結び付けて新し価値を生むか、なのでこのメカニズムを理解していることは大切だそう。
ではどのくらいの間が適当なのか。そしてどのような方法で繰り返し脳内に伝達物質を巡らせるようにすればいいのか。どんどん突っ込んでいきます。
まず学習する間について。資料を繰り返し読む実験をした研究結果によると、間が短すぎても長すぎてもダメだそうです。結論、4‐5日の間を置いて復習するのが効果的だとか(Verkoejian et. al., 2008)。
ということは大学院の授業は月曜~木曜に毎晩あるので、授業のない金曜~日曜に翌週の授業の資料を重点的に理解して、当日の昼休みに軽く目を通して考えをまとめるのが良さそう。
次に学ぶ方法の原則について。学ぶ方法の原則の大分類は2つで「深く考えること」「得た知識を他と関連づけたり、実際使ってみること」。細かくは更に16の小分類にわかれますが、結論としては、①自分は何を学ぶのか、その科目のストラクチャを理解する、②自分にとってどのように意味があるのか、そしてゴールは何処か明確にする、③最後に自分の言葉で学んだ内容を予習の段階でアウトプットして理解が甘そうなところを把握するのが大切でこれが最強の勉強法だそう(Kosslyn,S.M.(1994, 2017))。①②があるから、最初にシラバスを把握させるというわけか…。それにしても地味だな。
その他「誰もが試したことのある勉強法人気トップ5」の罠と解決法を研究した面白い論文も課題にあったので一部ご紹介します。例に挙げられていた勉強法は、①繰り返し教材を読む、②蛍光ペンを引く、③授業でノートをとる、④概要をまとめる、⑤単語カードで暗記する。全部身に覚えあるな…。参考になったので日本語で表にまとめてみました。当たり前と言えば当たり前ですが、どれも罠にハマると学習効果がほぼナシだと言う証拠が示されています。証拠を見せられると説得力高いな…。
Kosslyn, S.M. (1994). Image and brain. Cambridge, MA: MIT Press.
Kosslyn, S.M. (2017). The science of learning. In S.M. Kosslyn & B. Nelson (Eds.), Working universities: Minerva and the future of higher education. Cambridge, MA: MIT Press.
Miyatsu, T., Nguyen, K., and McDaniel, M.A. (2018). Five Popular Study Strategies: Their Pitfalls and Optimal Implementations. Perspectives on Psychological Science, 13, 390-407.
Verkoejian, P.P.L., Rikers, R.M.J.P., and Ozsoy, B(2008). Distributed rereading can furth the spacing effect in text memory. Applied Cognitive Psycology, 22, 685-695.
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